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小熊秀雄全集(おぐまひでおぜんしゅう)-10

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-29 0:43:11  点击:  切换到繁體中文


腐つた葡萄

腸の腐つた男の
垂れながしのやうに長い小説は
こんこんと眠る病人の読者のために書かれ
雑誌に掲載される
そしてこの読者に与へる読物は
口からでなく眼から
この汚れた文章は注ぎこまれる
石炭酸をぶちかけても
到底死滅しさうもない菌だらけの
空想の充満された頭で
でつちあげた嘘だらけの物語
民衆へ過度の痙攣を与へるために
存在するところの、お前芸術家よ
お前の嘔吐をもつて糊づけされた著作物
不遜にも表紙には金の星をちりばめ刷られたりして
この罰当りの真理とはおよそ
縁のないところの不摂生な
気取つた淫蕩男の体験を
富豪との情事に置きかへて
ながながと書かれた物語
貧困の者たちの喧騒の中へ
いかにもこれらの貧しきものの味方づらして
のこのことでかけてゆく偽良心家
他人を圧殺することで
そのものの屍体の上に
自分の棺を乗りつけて勝利を叫ぶ
赤ん坊の快楽を表現した鬚だらけの大人
文壇の駈け廻り者
政治家が好きでソファーを賞める心情を
そつとかくしてテーブルスピーチをやる輩
他人の死ぬのを見にでかける
図々しい果の知らない無神経野郎
委嘱されて材料をとりに
嬉しがつて農村まで飛んでゆく
もつとも政策にかなつた使ひ走り文士
いまこそ諷刺と称する
雑巾でせつせとこ奴等のツラを
拭つてやる番がやつてきたのだ
古い腐つた脊髄をもつて
辛うじて作品の五体を突立てゝゐる
執念ぶかい命根性の汚ない奴に
いちばん太い針で注射をしてやれ
彼等を蘇生させるためでなく
不真実をすみやかに溶かすために刺すのだ
若い吾が友、青年たちよ
鉄の羊として育てられたものよ
君等の世界には青草がある
陽と月と二つの目は君等のものだ
しづかに回転する時の瞳孔
何ものをも見透す強い視線は君のものだ
悪霊よりも魔女よりも
もつと神通力を発揮して
腐つた葡萄が汚ならしい鈴のやうになつてゐる
古い文学の樹を枯らさう


心の城崩れるとき

けふ城壁は祭壇となつて
一夜にして鮮かな赤い絨毯は壁にかけられ
白い新しい造花は供へられた
重い鎖が強く空中に引かれたとき
こゝの容子が一度に変つたのだ、
叫びは去つた、平安な夜の歌が城壁の上からきこえてくる、
みおろせば涯(ママ)かに病める庭
点々として煙のたちあがる穴、
私はこゝから哀悼する
火星が救ひに来る日まで
かくしていたるところの城壁は崩れ
自由の路は荒廃した、
たゞ読経者の職業的な
声が遠くから聞えてきた、
こゝで悔なく人々は戦つた
戦ふことに依つてすべてが終るかのやうに
狂気と酩酊とで
太陽が乱視の光線を放ち
地を掃きまはつた
黒い影が壁に殺到し
一方の影が一方の影を壁の後につき落した
瞬間に行はれた遊びは
沈痛な歌をもつて始まり
鈍重な叫びをもつて終りをつげた、
さらに歌は始まり、
叫びはつづく、
次の壁にむかつて鉄は祈りの声をあげ
火と呪ひの眼をしばたたく
心の城崩れるとき
一時に天は明るくなり
地の明るさの中に引きこまれる。


夜の床の歌

われらの希望は微塵に打砕かれた
太陽、もうお前も信じられない、
月、お前は雲の間を軽忽に走り去る。
すべてのものは狂犬の唾液に
ひたされたパンを喰ふ、
胸騒ぎは静まらない、
強い酒のためにも酔はない、
あゝ、彼等は立派な歴史をつくるために
白い紙の上に朱をもつて乱暴に書きなぐる、
数千年後の物語りの中の
一人物として私は棺に押し込められる
私はしかしそこで眼をつぶることを拒む、
生きてゐても安眠ができない、
死んでも溶けることを欲しない、
人々は古い棺ではなく
新しい棺を選んで
はじめて安眠することができるだらう。
太陽と月は、煙にとりかこまれ
火が地平線で
赤い木の実のやうに跳ねた。
あゝ、夢は去らない、
びつしよりと汗ばみながら
いらいらとした眼で
前方を凝視する。


日本の夢と枕の詩

誰もお前を愛さないとは言はない
「日本よ」寝起きの悪い子供であるお前を
誰が突然ゆり起したのか、
父でもなく、母でもなく
お前自身の中の夢がお前の枕を蹴つた
そのためにお前は一日中不機嫌であつた
語れ、幼児よ、心の中の秘密を――、
卑屈でもなく、臆病でもなく、深い掘割や
流れを危なげもなく、進む、自信に満ちた、
小さな旅立ちの行手に、お前は何を発見したか、
それを語れ、何を失ひ、何を得たか、
何を得て、何を失つたか、
はじける声と、すゝり泣きと、重いうめきを
出発するお前の、背後に聞きはしなかつたか、
生長するものが犯す冒険や
未知の世界を探る冒険を
お前の両親はおそれはしないだらう、
たゞ旅立つことが突然で
お前の追ふものの正体が不明であることだ
その上、お前は少しも後を振返ることをしない
停まらぬローラースケートか、
火の靴を履かされたやうに駈け去つた、
がら/\と音をたてゝ道路の上を――、
シュッ、シュッと音をたてゝ川の中を――
父親は悔いてゐる
寝てゐる床にお前の心の中の黒い夢が
大きくなつてゐたことに気がつかなかつたことを
母親も悔いてゐる
どうしてもつとあの子の枕を
しつかりと押へておかなかつたかを――、
誰もお前を愛さないとは言はない
お前はとつぜん抱擁の時を
ふりきつて遠く旅立つたゞけだ。

雲は星を掩ひかくして
夜の街を真暗にしてしまつた
悪い夢に加担して月まで忠実に欠けた
たくさんの褐[#右下の部分は「蝎」の右下部と同形]色の梟が降りて街角に立つた
彼等は精一杯羽をひろげた、
息子よ、お前が旅立つた後の街の様子は
曾つての日の美しさを全く失つた、
風は季節、季節にやつてこなかつた、
そして警笛が花を散らした
あるゆる自然なことや
不自然なことが灰のやうに降つた
人間が荒廃するかのやうであつた
間もなく不安は去つていつた
だが息子は戻つて来ない、
すぐ明日にも元気で帰つてくる、
或はお前のかはりに「永遠」が帰つてくる
前のものはお前の生きた肉体で
後のものであつたら父親のものでも
母親のものでもない「自然」のものだ、
愛は過度の悲しみの中では溺れるばかりだから、
人々はいつまでも悲しむことをしないだらう、
苦い運命が国民に見守られてゐる
生命が人々の前を素早く横切ると
つゞいて黒い猫が電気より早く駈けぬける
時が生命の影を捉へようと
追ひかけてゐるかのやうに――、
歴史もなく、自由もなく
たゞ眠りと食事と
前へ歩るきだすことゝ
急に駈け出すことゝ
にぶく反響する音と、人間の叫びのみ、
破廉恥な叫喚によつて
暁の花は目ざめ
無気味な沈黙によつて
山は眠りに陥る
獣は爪の長いことゝ
牙の鋭いことを競ひ合ふために
夜となく昼となくこの辺りを彷徨する
息子をのせた黒い夢も彷徨する
人にむかつても、自然にむかつても、
また政治にむかつても等しくその黒い祈り、
灰色の歌によつて行手は満たされてゐる、
不用意に朝は明け放された
こゝに父親は坐つてゐる
そのとき息子は遠くを歩るいてゐる
母親は意味もききとれないことを呟いてゐる
やがて息子が元気に
帰つてくる日を想像してゐるのだらう、
歴史の附添人が
黒いマントを着た息子と一緒に
親達の戸口にやつてきた
そして附添人は去つてしまつた、
「あゝ、待つてゐた息子が帰つて来た――」
両親はさう叫んで抱擁した
だがマントの中には息子の体がなかつた
息子でなく、夢の枕も捨てゝきた、
しよんぼりと立つてゐるのは
黒いマントであつた、
平安と喜悦の一瞬間は風が運び去り
不安と悲哀とがいり(ママ)替りにやつてきた、
遠い運命を、あまりにまざまざと
人々の近くにそれを見た。

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