鏡の恨み
「わたくしは地下にあることすでに数百年に及びまして、神仙となるべき
くれぐれも頼んで、彼女の姿は消えた。あくる日、人をあつめて工事に取りかかると、果たして土の下から一つの古い棺を掘り出して、その棺をひらいてみると、内には遠いむかしの
「その鏡は何か由緒のある品に相違ありません。いわゆる掘出し物だから取ってお置きなさい」
好奇心と慾心とが手伝って、忰は遂にその鏡を取り上げると、女の死骸はたちまち灰となってしまった。これには彼もおどろいて、慌ててその棺に土をかけたが、鏡はやはり自分の物にしていると、女の姿が又もや彼の夢にあらわれた。
「あれほど頼んで置いたのに、折角の修煉も
彼はそれを信じて、その鏡を大切に保存していると、鏡はときどきに声を発することがあった。ある夜、かの女が又あらわれて彼に教えた。
「宰相の楊公が江陵に府を開いて、才能のある者を
その当時、楊公が荊州に軍をとどめているのは事実であるので、忰は夢の教えにしたがって軍門に馳せ参じた。楊公が面会して兵事を談じると、彼は議論縦横、ほとんど常人の及ぶところでないので、楊公は大いにこれを奇として、わが
こうして、その出世は眼前にある時、彼は
「御心配なさることはありません。あなたは休養のために二、三日の暇を貰うことにして、あなたの
言われた通りにして、彼は家僕の死骸をひそかに運び出すと、あたかも軍門を通過する時に、その輿のなかからおびただしい血がどっと流れ出したので、番兵らに怪しまれた。彼はひき戻されて取調べを受けると、その言うことも
そこで、念のためにその鏡を取ろうとすると、鏡は大きいひびきを発してどこへか飛び去った。彼は獄につながれて死んだ。
韓氏の女
「わたくしはこの世の人ではありません」
周はいよいよ驚いて表へ逃げ出した。夜があけてから、近所の人びともその話を聞いて集まって来ると、女の声は袴のなかから洩れて出るのである。声は近いかと思えば遠く、遠いかと思えば近く、暫くして一個の美人のすがたが
「わたくしは
女は言いさして泣き入った。人びとは哀れにも思い、また不思議にも思って、早速に衆僧をまねいて仏事を営み、かの
慶忌
その頃、河を
「おれを殺すな。きっとお前たちに福を授けてやる」
人夫らは怖ろしくなって、ますますその火を強く
(谷の移らず水の絶えざるところには、数百歳にして涸沢の精を生ずと、捜神記にも見えている)。
洞庭の神
舟中の人もおどろき怪しんで見まわすと、舟を
やがて雲低く、雨降り来たると、人も獣もみな雲雨のうちに包まれて、天へ登るかのように消えてしまった。
これは折りおりに見ることで、すなわち洞庭の神であると舟びとが説明した。
※[#「口+斗」、288-1]蛇
そこで、ここらの地方の宿屋では小箱のうちに
「夜なかにあなたの名を呼ぶ者があっても、かならず返事をしてはなりません。ただ、この箱をあけて蜈蚣を放しておやりなさい」
その通りにすると、蜈蚣はすぐに出て行って、戸外にひそんでいるかの蛇の脳を刺し、安々と食いころして、ふたたび元の箱へ戻って来るという。
(宋人の小説にある
范祠の鳥
寺の僧らが怪しんでうかがうと、一羽の大きい鳥が両の
雨が晴れると共に、鳥はどこへか姿を隠した。