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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)15池北偶談(清)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-27 18:03:01  点击:  切换到繁體中文


   張巡の妾

 とう安禄山あんろくざんが乱をおこした時、張巡ちょうじゅん※(「目+隹」、第3水準1-88-87)すいようを守って屈せず、城中の食尽きたので、彼はわが愛妾を殺して将士にましめ、城遂におちいって捕われたが、なお屈せずに敵を罵って死んだのは有名の史実で、彼は世に忠臣の亀鑑きかんとして伝えられている。
 それから九百余年の後、しん康煕こうき年間のことである。会稽かいけい徐藹じょあいという諸生が年二十五で※(「やまいだれ+「暇」のつくり」、第3水準1-88-51)という病いにかかった。腹中に凝り固まった物があって、甚だ痛むのである。その物は腹中に在って人のごとくに語ることもあった。勿論、こういう奇病であるから、療治の効もなく、病いがいよいよ重くなったときに、一人の白衣を着た若い女がその枕元に立って、こんなことを言って聞かせた。
「あなたは張巡が妾を殺したことを御存じですか。あなたの前の世は張巡で、わたしはその妾であったのです。あなたが忠臣であるのは誰も知っていることですが、その忠臣となるがために、なんの罪もないわたしを殺して、その肉を士卒に食わせるような無残な事をなぜなされた。その恨みを報いるために、わたしは十三代もあなたを付け狙っていましたが、何分にもあなたは代々偉い人にばかり生まれ変っているので、遂にその機会を得ませんでした。しかも今のあなたはさのみ偉い人でもない、単に一個の白面はくめん(若く未熟なこと)書生に過ぎませんから、今こそ初めて多年の恨みを報いることが出来たのです」
 言い終って、女のすがたは消えてしまった。病人もそれから間もなく世を去った。

   火の神

 武進ぶしんの諸生で楊某ようなにがしという青年が、某家に止宿ししゅくしていたことがある。その家は富んでいるので、主人は毎晩おそくまで飲みあるいていたが、ある夜その主人が例に依って夜ふけに酔って帰ると、楊の部屋には燈火あかり煌々こうこうと輝いていた。
「まだ起きているのか」
 主人は窓の隙からそっと覗いてみると、つくえのそばには二本の大きい蝋燭を立てて、緋の着物の人が几に倚りかかって書物を読んでいた。
「楊さんもなかなか勉強だな」
 その晩はそのまま帰って、主人は翌日それを楊に話すと、かれは不思議そうな顔をしていた。
「いえ、ゆうべは早く寝てしまいました」
「いや、わたしが確かに見た。あなたは夜の更けるまでつくえにむかっていましたよ」と、主人は笑っていた。
 しかし楊は笑っていられなかった。
 これには何か子細があるに相違ないと思ったので、その晩は寝た振りをして窺っていると、夜も三更さんこう(午後十一時―午前一時)とおぼしき頃に、たちまち大きい声で呼ぶ者がある。それと同時に二本の大きい蝋燭ろうそくが地上にあらわれて、くれないの火焔ほのおが昼のようにあたりを照らすかと見るうちに、大勢の家来らしい者どもが緋の着物をきた人を警固して来た。人はここの家の主人がゆうべ見た通りに、几にむかって書物を読みはじめた。
 楊はおどろいて、大きい声で人を呼んだが、誰も来る者はなかった。緋衣の人も聞かないようなふうでしずかに書物を読みつづけていた。やがて五更ごこう(午前三時―五時)の頃になると、彼は又しずかにちあがって楊の寝床へ近寄って来た。他の者どももみな従って来て、楊の寝床の四脚をもたげて部屋じゅうをぐるぐる引きまわした末に、くうにむかって幾たびか投げあげた。楊はもう気絶してしまって、その後のことは知らなかったが、夜が明けて正気にかえった頃には、そこらに何者の姿もみえなかった。部屋の入口をあらためると、扉のかぎは元のままで、誰も出入りをしたらしい形跡もなかった。
「もしや夢か」
 自分が見ただけならば夢かとも思えるが、現に昨夜もここの主人が同じような不思議を見せられたのであるから、どうも夢とは思われない。こんなところに長居をするのは良くないとさとって、楊は翌日早々にここの家を立ち去った。
 それから四、五日の後、突然ここの家に火を発して、楊の部屋は丸焼けになった。

   文昌閣の鸛

 済南さいなん府の学堂、文昌閣ぶんしょうかくの家の棟に二羽のかん雁鴻がんこうの一種である)が巣を作っていた。ある日、それが西の郊外を高く飛んでいると、軍士の一人が矢を射かけて、その一羽のはぎにあたった。しかも鳥は落ちないで飛び去った。
 その以来、かの鳥はその脛に矢を負ったままで、家の棟の巣を出入りしているのを、大勢の人が常に見ていた。軍士も一時のいたずらであるから、再びそれを射ようともしなかった。
 ある日、中丞ちゅうじょうが来て軍隊を検閲するというので、一軍の将士はみな軍門にあつまり、牆壁しょうへきをうしろにして整列していると、かの鳥がその空の上に舞って来て、脛に負っている矢を地に落した。それがあたかもかの軍士の前に落ちて来たので、何ごころなく拾い取って眺めていると、俄かに耳が激しくかゆくなったので、彼はその矢鏃やじりで耳を掻いていると、突然にうしろの壁の一部がくずれて来て、その右のひじの上に落ちかかったので、矢鏃は耳の奥へ深く突き透った。
「これは鳥の恨みだ。わたしは助からない」と、軍士は言った。
 果たして数日の後に、彼は死んだ。

   剣侠

 某中丞ちゅうじょうが上江の巡撫じゅんぶであった時、部下の役人に命じて三千金を都へ送らせた。
 その途中、役人は古い廟に一宿すると、その夜のあいだにかの三千金を何者にか奪われた。しかも扉のかぎは元のままになっているので、すこぶる不思議に思ったが、ともかくも引っ返してその事を報告すると、中丞は大いに立腹して彼にそのつぐないをしろと責めた。
「勿論のことでございます」と、役人は答えた。「しかし、あまり奇怪の出来事でございますから、一カ月間の御猶予をねがいまして、そのあいだにその秘密を探り出したいと思います。わたくしが逃げ隠れをしない証拠には、妻や子を人質に残してまいります」
 中丞もそれを許したので、役人は再びかの古廟の付近へ行きむかって、種々に手を尽くして穿索せんさくしたが、遂にその端緒を探り出し得ないので、もう思い切って帰ろうかと思案しながら、付近の町をぼんやりと歩いていると、町のまんなかで盲目の老人に逢った。
 なんでも判らないことがあらば御相談なさい。――こういうふだがその老人の胸にかけてあった。物はためしであると思ったので、役人は彼をよび止めて相談すると、老人は訊いた。
「あなたの失った金は幾らです」
「三千金です」
「それならば大抵こころ当りがあります。わたしと一緒においでなさい」
 老人は先に立って案内した。最初の一日は人家のある村つづきであったが、それから先は深山へはいって、どこをどう辿ったのか判らなかったが、ともかくも第三日のひる頃に大きい賑やかな町へ行き着いた。と思うと、たちまち一人の男が来て役人に声をかけた。
「あなたはここらの人と見えないが、なにしに来たのです」
 老人が代って説明すると、その男はうなずいて役人を案内して行った。そのうちに老人のすがたは見えなくなってしまったので、どうなることかと不安ながら付いてゆくと、大路小路を幾たびか折れ曲がって、堂々たる大邸宅の門内へ連れ込まれた。さらに奥の間へ案内されると、広い座敷のなかにはただひとつのとうを据えて、ひとりの偉丈夫いじょうふが帽もかぶらず、靴も穿かずに、長い髪を垂れて休息していた。そのかたわらには五、六人の童子が扇を持ってあおいでいた。役人はつつしんで自分の来意を訴えると、男は童子にあごで指図して金を運ばせて来た。見ると、それはさきに盗難に逢った金で、その封も元のままになっていた。
「この金が欲しいのか」と、男は訊いた。
「頂戴が出来れば結構でございますが……」と、役人は恐る恐る答えた。
「なにしろ疲れたろう。すこし休息するがよい」
 ひとりの男が彼をまた案内して、奥まったひと間へ連れ込み、一旦は扉をしめて立ち去ったが、やがて食事の時刻になると、立派な膳部を運んで来てくれた。それでも役人の不安はまだ去らないので、日の暮れ果てるのを待って、そっとうしろの戸をあけてあたりを窺うと、今夜は月の明るい宵で、そこらの壁のきわに何物かが累々るいるいと積み重ねてあるのが見える。よくよく透かして視ると、それはみな人間の鼻や耳であったので、役人は気が遠くなるほどに驚かされた。しかし容易に逃げ去るすべはあるまいと思われるので、ただおめおめと夜のあけるのを待っていると、彼は再び主人の男の前によび出された。男はやはりきのうの通りの姿で、彼にむかって言い渡した。
「あの金をおまえにやることは出来ない。しかしお前の迷惑にならないように、これをやる。持って帰って上官にみせろ」
 何か一枚の紙にかいた物をくれたので、役人は夢中でそれを受取ると、ひとりの男がまた彼を案内して、三日の後に元の場所まで送り帰してくれた。何がなんだか更にわからないので、役人はまだ夢をみているような心持で帰って来て、中丞にその次第を報告し、あわせてかの一紙をみせると、中丞は不思議そうに読んでいたが、たちまちにその顔色が変った。
 役人の妻子はすぐに人質をゆるされた。紛失の三千金もつぐなうには及ばぬと言い渡された。それで役人は大いに喜んだが、さてその一紙には何事がしるしてあったのか、その秘密はわからなかった。しかも後日になって、その書中には大略左のごときことがしたためてあるのを洩れ聞いた。
 ――おまえは平生から官吏として賄賂をむさぼり、横領をほしいままにしている。その罪まことに重々である。就いては小役人などを責めて、償いの金を徴収するな。さもなければ、何月何日の夜半に、おまえの妻の髪の毛が何寸切られていたか、よくあらためてみろ――
 中丞が顔の色を変えて恐れたのも無理はなかった。彼の妻は、その通りに髪を切られていたのである。かの無名の偉丈夫は、いわゆる剣侠のたぐいであることを、役人は初めてさとった。


 

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