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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)11異聞総録・其他(宋)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-27 17:50:56  点击:  切换到繁體中文


   古御所

 洛陽らくようの御所は隋唐五代の故宮こきゅうである。その後にもここに都するの議がおこって、宋の太祖の開宝かいほう末年に一度行幸の事があったが、何分にも古御所ふるごしょに怪異が多く、又その上に霖雨ながあめに逢い、ひでりいのってむなしく帰った。
 それから宣和せんな年間に至るまで年を重ぬること百五十、故宮はいよいよ荒れに荒れて、金鑾殿きんらんでんのうしろから奥へは白昼も立ち入る者がないようになった。立ち入ればとかくに怪異を見るのである。大きな熊蜂や蟒蛇うわばみも棲んでいる。さらに怪しいのは、夜も昼も音楽の声、歌う声、く声などの絶えないことである。
 宣和の末に、呉本ごほんという監官があった。彼は武人の勇気にまかせて、何事をもおそはばからず、夏の日に宮前の廊下に涼んでいて、さるの刻(午後三時―五時)を過ぐるに至った。まだ暗くはならないが、場所が場所であるので、従者は恐れて早く帰ろうと催促したが、呉は平気で動かなかった。
 たちまち警蹕けいひつの声が内からきこえて、衛従の者が紅い絹をかけた金籠の燭を執ること数十つい、そのなかに黄いろい衣服を着けて、帝王の如くに見ゆる男一人、その胸のあたりにはなまなましい血を流していた。そのほかにも随従の者大勢、列を正しく廊下づたいに奥殿へ徐々しずしずと練って行った。
 呉と従者は急いで戸の内に避けたが、最後の衛士は呉がここに涼んでいて行列の妨げをなしたのを怒ったらしく、その臥榻がとうの足をとって倒すと、榻は※(「土+專」、第3水準1-15-59)いしがわらをうがって地中にめり込んだ。衛士らはそれから他の宮殿へむかったかと思うと、その姿は消えた。
 呉もこれを見て大いにおどろいた。その以来、彼は決してこの古御所に寝泊まりなどをしなかった。彼は自分の目撃したところを絵にかいて、大勢の人に示すと、洛陽の識者は評して「これは必ず唐の昭宗しょうそうであろう」と言った。
 唐の昭宗皇帝は英主であったが、晩唐の国勢振わず、この洛陽で叛臣朱全忠しゅぜんちゅうのためにしいせられたのである。
(同上)

   我来也

 京城の繁華の地区には窃盗が極めて多く、その出没すこぶる巧妙で、なかなか根絶することは出来ないのである。
 趙尚書ちょうしょうしょ臨安りんあんいんであった時、奇怪の賊があらわれた。彼は人家に入って賊を働き、必ず白粉をもってその門や壁に「我来也がらいや」の三字を題して去るのであった。その逮捕甚だ厳重であったが、久しいあいだ捕獲することが出来ない。
 我来也の名は都鄙とひ喧伝けんでんして、賊を捉えるとはいわず、我来也を捉えるというようになった。
 ある日、逮捕の役人が一人の賊をいて来て、これがすなわち我来也であると申し立てた。すぐに獄屋へ送って鞠問きくもんしたが、彼は我来也でないと言い張るのである。なにぶんにも証拠とすべき贓品ぞうひんがないので、容易に判決をくだすことが出来なかった。そのあいだに、彼は獄卒にささやいた。
「わたしは盗賊には相違ないが、決して我来也ではありません。しかしうなったら逃がれる道はないと覚悟していますから、まあいたわっておくんなさい。そこで、わたしは白金そくばくを宝叔塔ほうしゅくとうの何階目に隠してありますから、お前さん、取ってお出でなさい」
 しかし塔の上には昇り降りの人が多い。そこに金を隠してあるなどは疑わしい。こいつ、おれをかつぐのではないかと思っていると、彼はまた言った。
「疑わずに行ってごらんなさい。こちらに何かの仏事があるとかいって、お燈籠に灯を入れて、ひと晩廻り廻っているうちに、うまく取り出して来ればいいのです」
 獄卒はその通りにやってみると、果たして金を見いだしたので、大喜びで帰って来て、あくる朝はひそかに酒と肉とを獄内へ差し入れてやった。それから数日の後、彼はまた言った。
「わたしはいろいろの道具をかめに入れて、侍郎橋じろうきょうの水のなかに隠してあります」
「だが、あすこは人足ひとあしの絶えないところだ。どうも取り出すに困る」と、獄卒は言った。
「それはこうするのです。お前さんのうちの人が竹籃たけかごに着物をたくさん詰め込んで行って、橋の下で洗濯をするのです。そうして往来のすきをみて、その瓶を籃に入れて、上から洗濯物をかぶせて帰るのです」
 獄卒は又その通りにすると、果たして種々の高価の品を見つけ出した。彼はいよいよ喜んで獄内へ酒を贈った。すると、ある夜の二更にこう(午後九時―十一時)に達する頃、賊は又もや獄卒にささやいた。
「わたしは表へちょっと出たいのですが……。四更(午前一時―三時)までには必ず帰ります」
「いけない」と、獄卒もさすがに拒絶した。
「いえ、決してお前さんに迷惑はかけません。万一わたしが帰って来なければ、お前さんは囚人めしゅうどを取り逃がしたというので流罪るざいになるかも知れませんが、これまで私のあげた物で不自由なしに暮らして行かれる筈です。もし私の頼みをいてくれなければ、その以上に後悔することが出来るかも知れませんよ」
 このあいだからの一件を、こいつの口からべらべらしゃべられては大変である。獄卒も今さら途方にくれて、よんどころなく彼を出してやったが、どうなることかと案じていると、やがてのきの瓦を踏む音がして、彼は家根やねから飛び下りて来たので、獄卒は先ずほっとして、ふたたび彼に手枷足枷をかけて獄屋のなかに押し込んで置いた。
 夜が明けると、昨夜三更、張府に盗賊が忍び入って財物をぬすみ、府門に「我来也」と書いて行ったという報告があった。
「あぶなくこの裁判を誤まるところであった。彼が白状しないのも無理はない。我来也はほかにあるのだ」と、役人は言った。
 我来也の疑いを受けた賊は、叩きの刑を受けて境外へ追放された。獄卒は我が家へ帰ると、妻が言った。
「ゆうべ夜なかに門を叩く者があるので、あなたが帰ったのかと思って門をあけると、一人の男が、二つの布嚢ぬのぶくろをほうり込んで行きました」
 そのふくろをあけて見ると、みな金銀のうつわで、賊は張府で盗んだ品を獄卒に贈ったものと知られた。趙尚書は明察の人物であったが、遂に我来也の奸計をさとらなかったのである。
 獄卒はやがて役をめて、ふところ手で一生を安楽に暮らした。その歿後、せがれは家産を守ることが出来ないで全部蕩尽とうじん、そのときに初めてこの秘密を他人に洩らした。
(諧史)

   海井

 華亭かてい県の市中に小道具屋があった。その店に一つの物、それは小桶に似て底がなく、竹でもなく、木でもなく、金でもなく、石でもなく、名も知れなければ使い途も知れなかった。店に置くこと数年、誰も見かえる者もなかった。
 ある日、商船の老人がそれを見て大いにおどろき、また喜んだ気色けしきで、しきりにそれを撫でまわしていたが、やがてその値いを訊いた。道具屋の亭主もぬかりなく、これは何かの用に立つものとて取って、出たらめに五百びんと吹っかけると、老人は笑って三百緡に負けさせた。その取引きが済んだ後に、亭主は言った。
「実はこれは何という物か、わたしも知らないのです。こうして取引きが済んだ以上、決してかれこれは申しませんから、どうぞ教えてください」
「これは世にめずらしい宝だ」と、老人は言った。「その名を海井かいせいという。普通の航海には飲料として淡水を積んで行くのが習い、しかもこれがあれば心配はない。海の水を汲んで大きいうつわに満々とたたえ、そのなかに海井を置けば、潮水は変じて清い水となる。異国の商人からかねてその話を聞いていたが、わたしも見るのは今が始めで、これが手に入れば、もう占めたものだ」
(癸辛雑識続集)
 


 

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