死婦の舞
鄭賓于の話である。彼が曾て河北に客となっているとき、村名主の妻が死んでまだ葬らないのがあった。日が暮れると、その家の娘子供は、どこかで音楽の声がきこえるように思ったが、その声は次第に近づいて庭さきへ来た。妻の死骸は動き出した。 音楽の声は室内へはいって、梁か棟のあいだに在るかと思うと、死骸は起って舞いはじめた。声はさらに表の方へ出ると、それに導かれたように死骸もあるき出して、ついに門外へ立ち去った。家内一同はおどろき懼れたが、月の暗い夜であるので、追うことも出来なかった。 夜ふけに名主は外から帰って来て、その話を聞くと、彼はふとい桑の枝を折り取った。それから酒をしたたかに飲んで、大きい声で罵りわめきながら、墓場の森の方角へたずねてゆくと、およそ五、六里(六丁一里)の後、柏の樹の森の上で又もやかの音楽の声がきこえた。 近寄ってみると、樹の下に明るい火が燃えて、そこに妻の死骸が舞っているのである。彼は桑の杖を振りあげて死骸を撃った。 死骸が倒れると、怪しい楽の声もやんだ。彼は死骸を背負って帰った。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
- [#…]は、入力者による注を表す記号です。
- 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。
- 傍点や圏点、傍線の付いた文字は、強調表示にしました。
- この作品には、JIS X 0213にない、以下の文字が用いられています。(数字は、底本中の出現「ページ-行」数。)これらの文字は本文内では「※[#…]」の形で示しました。
「うかんむり/必/冉」 |
|
82-15、82-16 |
「「樗」のつくり+おおざと」 |
|
105-2、105-12 | 上一页 [1] [2] [3] [4] [5] [6] 尾页
|