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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)05酉陽雑爼(唐)
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妬婦津
伝えて言う、晋の大始年中、劉伯玉の妻段氏は字を光明といい、すこぶる嫉妬ぶかい婦人であった。 伯玉は常に洛神の賦を愛誦して、妻に語った。 「妻を娶るならば、洛神のような女が欲しいものだ」 「あなたは水神を好んで、わたしをお嫌いなさるが、わたしとても神になれないことはありません」 妻は河に投身して死んだ。それから七日目の夜に、彼女は夫の夢にあらわれた。 「あなたは神がお好きだから、わたしも神になりました」 伯玉は眼が醒めて覚った。妻は自分を河へ連れ込もうとするのである。彼は注意して、その一生を終るまで水を渡らなかった。 以来その河を妬婦津といい、ここを渡る女はみな衣裳をつくろわず、化粧を剥がして渡るのである。美服美粧して渡るときは、たちまちに風波が起った。ただし醜い女は粧飾して渡っても、神が妬まないと見えて無事であった。そこで、この河を渡るとき、風波の難に逢わない者は醜婦であるということになるので、いかなる醜婦もわざと衣服や化粧を壊して渡るのもおかしい。 斉の人の諺に、こんなことがある。 「よい嫁を貰おうと思ったら、妬婦津の渡し場に立っていろ。渡る女のよいか醜いかは自然にわかる」
悪少年
元和の初年である。都の東市に李和子という悪少年があって、その父を努眼といった。和子は残忍の性質で、常に狗や猫を掻っさらって食い、市中の害をなす事が多かった。 彼が鷹を臂に据えて往来に立っていると、紫の服を着た男二人が声をかけた。 「あなたは李努眼の息子さんで、和子という人ではありませんか」 和子がそうだと答えて会釈すると、二人はまた言った。 「少し子細がありますから、人通りのない所で話しましょう」 五、六歩さきの物蔭へ連れ込んで、われわれは冥府の使いであるから一緒に来てくれと言ったが、和子はそれを信じなかった。 「おまえ達は人間ではないか。なんでおれを欺すのだ」 「いや、われわれは鬼である」 ひとりがふところを探って一枚の諜状を取り出した。印の痕もまだあざやかで、李和子の姓名も分明にしるしてあった。彼に殺された犬猫四百六十頭の訴えに因って、その罪を論ずるというのである。 和子も俄かにおどろき懼れて、臂の鷹をすてて拝礼し、その上にこう言った。 「わたくしも死を覚悟しました。しかしちっとのあいだ猶予して、わたくしに一杯飲ませてください」 あなた方にも飲ませるからと言って、無理に勧めてそこらの店屋へ案内したが、二人は鼻を掩うてはいらない。さらに杜という相当の料理屋へ連れ込んだが、二人のすがたは他人に見えず、和子が独りで何か話しているので、気でも違ったのではないかと怪しまれた。彼は九碗の酒を注文して、自分が三碗を飲み、余の六碗を西の座に据えて、なんとか助けてもらう方便はあるまいかと頼んだ。 二人は顔をみあわせた。 「われわれも一酔の恩を受けたのであるから、なんとか取り計らうことにしましょう。では、ちょっと行って来るから待っていて下さい」 出て行ったかと思うと、二人は又すぐに帰って来た。 「君が四十万の銭をわきまえるならば、三年の命を仮すことにしましょう」 和子は承諾して、あしたの午の刻までにその銭を調えることに約束した。二人は酒の代を払った上に、その酒を和子に返した。で、彼は試みに飲んでみると、その味は水のごとくで、歯に沁みるほどに冷たくなっていた。和子は急いで我が家へ帰って、衣類諸道具を売り払って四十万の紙銭を買った。 約束の時刻に酒を供えて、かの紙銭を焚くと、きのうの二人があらわれてその銭を持って行くのを見た。それから三日の後に、和子は死んだ。 鬼界の三年は、人間の三日であった。
唐櫃の熊
唐の寧王が※[#「「樗」のつくり+おおざと」、105-2]県の界へ猟に出て、林のなかで獲物をさがしていると、草の奥に一つの櫃を発見した。蓋の錠が厳重に卸してあるのを、家来に命じてこじ明けさせると、櫃の内から一人の少女が出た。その子細をたずねると、彼女は答えた。 「わたくしは姓を莫と申しまして、父はむかし仕官の身でござりました。昨夜劫盗に逢いましたが、そのうちの二人は僧で、わたくしを拐引してここへ運んで参ったのでござります」 愁いを含んで訴える姿は、又なく美しく見えたので、王は悦んで自分の馬へ一緒に乗せて帰った。そのときあたかも一頭の熊を獲たので、少女の身代りにその熊を櫃に入れて、もとの如くに錠をおろして置いた。 その頃、帝は美女を求めていたので、王はかの少女を献上し、且つその子細を申し立てると、帝はそれを宮中に納れて才人の列に加えた。それから三日の後に、京兆の役人が奏上した。 ※[#「「樗」のつくり+おおざと」、105-12]県の食店へ二人の僧が来て、一昼夜万銭で部屋を借り切りにした。何か法事をおこなうのだといっていたが、ただ一つの櫃を舁き込んだだけであった。その夜ふけに、ばたばたいう音がきこえて、翌あさの日の出る頃まで戸を明けないので、店の主人が怪しんで、戸をあけて窺うと、内から一頭の熊が飛び出して、人を突き倒して走り去った。二人の僧は熊に啖われたと見えて、骸骨をあらわして死んでいた。 帝はその奏聞を得て大いに笑った。すぐに寧王のもとへその事を知らせてやって、君はかの悪僧らをうまく処置してくれたと褒めた。少女は新しい唄を歌うのが上手で、莫才人囀と言いはやされた。
徐敬業
唐の徐敬業は十余歳にして弾射を好んだ。小弓をもって弾丸を射るのである。父の英公は常に言った。 「この児の人相は善くない。後には我が一族を亡ぼすものである」 敬業は射術ばかりでなく、馬を走らせても消え行くように早く、旧い騎手も及ばない程であった。英公は猟を好んだので、あるとき敬業を同道して、森のなかへはいって獣を逐い出させた。彼のすがたが森の奥に隠れた時に、英公は風上から火をかけた。父は我が子の将来をあやぶんで焼き殺そうとしたのである。 敬業は火につつまれて、逃るるところのないのを覚るや、乗馬の腹を割いてその中に伏していた。火が過ぎて、定めて焼け死んだと思いのほか、彼は馬の血を浴びて立ち上がったので、父の英公もおどろいた。 敬業は後に兵を挙げて、則天武后を討とうとして敗れた。
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