蛟を生む
長沙の人とばかりで、その姓名を忘れたが、家は江辺に住んでいた。その娘が岸へ出て衣を濯いでいると、なんだか身内に異状があるように感じたが、後には馴れて気にもかけなかった。 娘はいつか懐妊して、三つの生き物を生み落したが、それは小鰯のような物であった。それでも自分の生んだ物であるので、娘は憐れみいつくしんで、かれらを行水の盥のなかに養って置くと、三月ほどの後にだんだん大きくなって、それが蛟の子であることが判った。蛟は龍のたぐいである。かれらにはそれぞれの字をあたえて、大を当洪といい、次を破阻といい、次を撲岸と呼んだ。 そのうちに暴雨出水と共に、三つの蛟はみな行くえを晦ましたが、その後も雨が降りそうな日には、かれらが何処からか姿を見せた。娘も子供らの来そうなことを知って、岸辺へ出て眺めていると、蛟もまた頭をあげて母をながめて去った。 年を経て、その娘は死んだ。三つの蛟は又あらわれて母の墓所に赴き、幾日も号哭して去った。その哭く声は狗のようであった。
秘術
銭塘の杜子恭は秘術を知っていた。かつて或る人から瓜を割く刀を借りたので、その持ち主が返してくれと催促すると、彼は答えた。 「すぐにお返し申します」 やがて其の人が嘉興まで行くと、一尾の魚が船中に飛び込んだ。その腹を割くと、かの刀があらわれた。
木像の弓矢
孫恩が乱を起したときに、呉興の地方は大いに乱れた。なんのためか、ひとりの男が蒋侯の廟に突入した。蒋子文は広陵の人で、三国の呉の始めから、神としてここに祀られているのである。 蒋侯の木像は弓矢をたずさえていたが、その弓を絞って飄と射ると、男は矢にあたって死んだ。往来の者も、廟を守る者も、皆それを目撃したという。
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