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予報省告示(よほうしょうこくじ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:47:55  点击:  切换到繁體中文



 世界暦二千一年十三月十三日

 宇宙戦争が勃発する。
 オウピアン星の惑星キリキズの軍事主義民族軍団千二百万人が襲来する。侵寇の目的は、地球をその資源庫の一つとするにあり、殊に人類の家畜化というきたない欲望を有している。地球防衛軍は大苦戦に陥る。
 日本国民は文化外交の面に於いて大いに活躍し、相当の収穫あり。尚、宇宙戦争の勃発により、第三次世界戦争は休戦となり、急転直下して世界同盟成る。

 世界暦二千年一月十九日

 大西洋横断の旅客機と貨物機が二ヶ月前より頻々として行方不明となっていたが、その事件を調査の結果本日一大発見成る。それによれば、大西洋の赤道附近の海中に怪賊団あり、従来行方不明なりし人々は海底の船艙の如きものの中に幽閉せられて居ることが明かとなった。
 当時、世界戦争中ではあったが、その戦争中の不便不利を忍んで、これらの俘囚の奪還が試みられた。しかし相手は巨大なる反撃力を有し、而もわれらの知識に全然なき武器を有して居て、奪還は不成功に終った。そして知り得たのは、怪賊団が地球人類ではなく、他の惑星の生物群の組織する遠征隊乃至探検隊らしいということだけであった。九月九日、彼らは忽然として、大西洋海中を退去し、この種の事件は跡を絶った。

 世界暦千九百九十九年四月一日

 第三世界戦争が勃発する。但し四月馬鹿ではない。

 世界暦千九百九十年

 人間の寿命は無限となし得ることに成功する。その方法は、手術法と機械代用法とで、前者は後者に比し一千倍高価である。
 この成功は、世界中を歓喜せしめ、世界祭が三ヶ月連続に行われる。人類は幸福の絶頂にある。

 世界暦千九百八十年

 火星探検は不成功に終る。火星上陸は絶対に不可能と決定される。蓋し、火星上空にある宇宙塵の妨害によるものと思われる。
 なお、火星には生物はなく、植物は繁茂しているが、下等のものばかりで、火星は一路衰滅に直進せることが判明し、永い間のお伽噺とぎばなしが御破産となる。

 世界暦千九百六十年八月八日

 月世界探検に成功する。つづいて世界漫遊飛行会社設立し、旅行申込者が殺到する。

 世界暦千九百五十五年

 地球一周が十二時間で出来るようになる。原子エンジンの完成を見たためである。
 宇宙飛行の企業が盛んになる。

 世界暦千九百四十九年十月

 日本の食糧欠乏問題が解決する。
 米を始め、食糧はすべて自由販売となる。

 世界暦千九百四十七年

 飢餓のため日本人死するもの続出。

〔註〕 右の予報省告示は、省員が精神もうろう状態に予測したものであって、多分このような暗いことだらけの予報は全然的中しないであろうと思料せられるが、腹の減ったる人間というものはどんな妄想を抱くに至るかという医学的資料として参考になるかと思われるので、敢えて掲載する次第なり。


 〔読後感その一〕 この予報省告示は、そんなに暗くないよ。人類はやがて、スバル太陽系の惑星へ宇宙移住し、かの地で繁栄するのだから、明るいじゃないか。

(大学生)

 〔読後感その二〕 まだ二年経たないと、食糧事情は好転しないのですか。私はあと一年で回復するよう祈っていますのに。

(子沢山の父親)

 〔読後感その三〕 これが本当なら、至急に、世界は協力して、氷河期対策調査事業を起すべきだと考えます。

(婦人代議士候補者)

 〔読後感その四〕 また戦争だなどと、そんな不吉なことをいうなよ。

(懲々生)




 



底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
   1992(平成4)年2月29日第1版第1刷発行
入力:海美
校正:もりみつじゅんじ
2000年1月10日公開
2006年7月26日修正
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