您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 海野 十三 >> 正文

幽霊船の秘密(ゆうれいせんのひみつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:41:56  点击:  切换到繁體中文



   幽霊船現わる


 無電技士丸尾の遺書は、あまりに簡単であったため、二号艇に乗組んでいた二十何名かの船員の最期さいごを語りつくしていたとはいえなかった。
 だが、まったく遺書がない場合よりも、はるかによかった。すなわち「幽霊船」にしてやられたらしいこと、そこには「人間よりおそろしい」何者かがいるらしいことが、おぼろげながら分ったからである。
 丸尾の遺書が知れわたると、一号艇の人たちは、破れかかった二号艇の中を、あらためて見なおした。それは惨状のうちにもなにかもっと彼等に役立つことが、ありはしないかとおもったからであった。
「おれは、だんぜんこの仇うちをしなければはらえないんだ。幽霊船をみつけ次第、おれはそのうえに飛びのってやる。そして幽霊どもを、これでぶったってやるんだ」
 そういって、腰のジャック・ナイフを握りしめる船員もあった。
「おいおい、あれを見ろ。あのとおり、腕をひききやがった。一度りつけただけでは足りないで、三筋みすじも四筋も斬りつけてある」
「うん、まるでフォークをつきこんで、ひき裂いたようだなあ」
「ああ、猛獣の爪にひき裂かれたようではないか」
 船長は、彼等の会話をきいて、ともに涙をのんだ。
 二号艇にはかいがなかったが、一号艇にはぎっしり人がのっていたので、その一部が二号艇にのりうつることにした。
 古谷局長と、貝谷という射撃のうまい船員と、そのほか六名の船員がのりこんだ。こうして二手にわかれて、また海をただようことにした。
 二号艇へのりこんだ古谷局長は、一同をさしずして、艇内の血を洗ったり、僚友の遺骸いがいの一部分を片づけたりした。そのうちに太陽はだんだん西の水平線に傾き、大空一杯に、豪快なる夕焼がひろがった。
「どうも、あの雲が気になるね」
 などと、いっているうちに、入道雲がくずれだした。それは特別に灰色がかった大きい奴で、下の方が煙のようなものの中に隠れていた。
「おい、一雨ひとあめやってくるぜ。いまぴかりと光ったよ」
「おう、入道雲の中で光ったね。うむ、風が出てきたぞ。これはまたやられるか」
 なにしろ助けを呼ぶにも、どこにも一隻の船影さえ見えないのである。櫂を握るにもあてはなし、風浪のまにまに漂ってゆくより外に仕方がない身の上であった。そこへ一時的の雷雨にしろ、飢渇きかつと疲労とに弱っているところを叩かれる身はつらいことであった。
 そうこうしているうちに、海は白い波頭を見せて荒れてきた。ぽつり、ぽつりとおちてくる大粒の雨!
 やがてあたりは真暗まっくらになり、ぼんをひっくりかえしたような豪雨となった。それにまじって、どろんどろんと地軸もさけんばかりに雷鳴はとどろく。
「おい離れるな」
「おう、かじをとられるな」
 二艘のボートは、たがいに必死のこえで叫びあう。どこが海だか空だか分らない。そのときだった。
「あっ、幽霊船が通る!」
「えっ、幽霊船!」
 灰色の壁のような雨脚の中に、一隻の巨船が音もなく滑ってゆく。二三百メートルの近くであった。まさしく幽霊船だ!


   逃がすな幽霊船


 幽霊船にゆきあうのは、これで幾度目であろうか。たしか和島丸が撃沈せられて、一同が四艘のボートに乗じて海上へのがれたとき、この幽霊船がとおった。それからこれで二度目である。
 はじめのときは、幽霊船に一発弾丸をおくってみただけで、そのままなにもしなかった。だが、きょうは幽霊船を別な目でみる!
 なぜといって、行方不明ゆくえふめいになった丸尾無電技士の手首が発見され、そのの中に、ただごとではない手紙が握られていたのである。ことに“幽霊船に近よるな”とあるからには、この幽霊船は丸尾たち元の二号艇の乗組員に対して、なにかおそろしい危害を加えたものと思われる。一体彼等はどんなおそろしい目にあったのか。そして彼等は一体どこへいってしまったのか。――いや、いってしまったなどというよりも、彼等は一人のこらず殺されてしまったのだと書く方が正しいかもしれないのだ。いま雷雨のなかに突然現われた幽霊船!
「うぬ、幽霊船め、こんどは只じゃ通さないぞ。そうだ、そうだ。乗組員の敵だ。かたきうちをしなくちゃ、腹の虫がおさまらないや」
 二艘のボートからは、乗組員たちが異口同音いくどうおんに、いましも傍にきた幽霊船に対して怒りの声をなげかけた。盆をくつがえすような雷雨も、山のような波浪も、それから幽霊船の恐ろしさも、彼等はすっかり忘れていた。それほど彼等にとって、幽霊船はにくい存在だったのである。
「船長、私をあの幽霊船へやってください。私は仲間が、どうして殺されたかをよく調べてくるつもりです。きっと秘密は、あの船の中にあるのです」
「わしもやってくだせえよ。船長さん。丸尾はいい青年で、わしに親切にしてくれた。ここでわしは丸尾のために仇をうたなくちゃ、生きながらえているのがつらい」
 あっちからもこっちからも、船長のところへ幽霊船探険を志願するものがたくさん出てきて、佐伯船長もどうしてよいやらすくなからず困った。彼等は、幽霊船の出てくる前には、えとかわきとで、病人のようにへたばっていたのに、いまは戦士のように元気にふるい立っている。大雷雨も波浪も、必ず近よるなという注意書のあったおそろしい幽霊船も、彼等には大しておそろしいものではなくなったらしい。佐伯船長は、この様子を見ていたが、このとき大きくうなずき、
「よし、みんなのいうことは、よくわかった。では、あの幽霊船へ探険隊をやることにする」
 二そうのボートの中からは、どっとよろこびの声があがった。
「いまから命令を出す。古谷局長を隊長とし、二号艇の全員は探険隊として、直ちに出発! 一号艇は、予備隊としてしばらく海上から幽霊船の様子を見ていることにする」
 それをきいて、悦ぶ者と、不満の舌うちをする者。
「これ、さわいでいる場合ではない。ぐずぐずしているうちに幽霊船が遠くへいってしまうぞ。おい、二号艇、すぐ出発だ!」

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]  ... 下一页  >>  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告