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もくねじ(もくねじ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:40:24  点击:491  切换到繁體中文



   幸運こううん


 すっかり希望を失ったぼくは、機械台の上にいつまでもふるえながら、なげき悲しんでいた。
 そのうちに、ぼくはとつぜんむずとつまみあげられた。ぼくはおどろいた。はっとして目をみはると、知らない若い男の指に摘みあげられていた。
 その若い男は、もう一人の男と、しきりにあまりよくないところの話に夢中になっていた。
「よせよ、大きなこえを出すない。木田さんに聞かれたら、怒られるよ」
「大丈夫だい。木田さんは呼ばれて主任のところへ行っちまった。おい、どうする。行くか、行かないか」
「おれはいやだよ」
「ばか。いくじなし」
 そういいながら、その若い男は、ぼくを穴の中へんだ。私はこの意外な出来事に、夢かとばかりおどろき、そして胸を躍らせた。木田さんが向うへいった留守に、何にもしらないこの若い男が、ぼくをよく調べもしないで、装置の穴の中に挿し込んでしまったのである。やがてぼくの頭に、ドライバーが当てられた、ぐっとされて、きりきりと右へ廻された。ドライバーは、何遍なんべんかつるりとすべった。そのたびにやり直しだ。
 だがその若い男は、話に夢中になっていたので、文句も云わず何遍でもやり直して、とうとうぼくを穴の中に圧し込んでしまったのである。
 ぼくはしばら呆然ぼうぜんとなっていた。
 喜んでいいのか、それとも悲しんでいいのか。
 自分のあさましい身の上が分ると、ぼくはもう初めに考えていたように、大きなりっぱな機械にいだかれることをすっかり断念しなければならなかった。今の今まで、断念していたのである。
 ところが思いがけなく、ぼくはあこがれの国際放送機の中に取付けられてしまったのである。こんなうれしいことが又とあろうか。
 ぼくを、こうした思いがけないすばらしい幸運へなげこんでくれたこの若い男に対し、どんなに感謝しても感謝し足りないと思った。
 だが、ぼくの心の隅に、何だかおりのようなものがたまっていることについて、ぼくはいささか気にしないわけにいかなかった。というのは、ぼくは公然堂々こうぜんどうどうと大手をふってこの大役にとびこんだわけではなかったのである。
 早くいえば、その若い男が、くだらない話に夢中になっているお蔭で、こんなことになったのである。それは決して公明正大であるとはいえない。身は一つのもくねじであるが、日本に生まれた以上、やっぱり日本精神を持っている。だからぼくの折角せっかくのこの幸運も、自らかえりみて、いささか暗い蔭のさしていることがいなめない。
 それでもいいのであろうか。
 声をたてるわけにもいかないので、ぼくはだまってそのまま成行なりゆきにまかせるよりほかなかった。不幸なる幸福! 少々うしろめたい幸運!
 果してぼくは、いつまでも幸福でいられるであろうか。


   悲劇ひげき


 その後ぼくは異状がなかった。
 ぼくの取付けられた放送機は、それからのち方々へ廻った。
 多くの時間が、この装置の試験についやされた。装置には、真空管しんくうかんも取付けられ、すっかりりっぱになったところで、はじめて電気が通され、計器の針が動いた。
 試験をしていると、装置はだんだん熱してきた。ぼくはあまり暑くて、しまいには汗をかいた。
 そのうちに試験も終り、荷作にづくりされた。
 ぼくはトラックにられ、それから貨車の中に揺られ、放送所のある遠方えんぽうの土地まではこばれていった。
 そこから先、またトラックにのせられ、寒い田舎を搬んでいかれた。
 そして遂に放送所についた。
 ぼくの取付けられている機械は、函から出された。そこには多勢の技師が待っていた。
「ああよかった。これで安心だ。間に合うかどうかと思って、ずいぶん心配したなあ」
 その中の一等年齢としをとった人が、そういって一同の顔を見廻した。
 それからぼくの機械は、多勢の肩にかつがれ、二階の機械室まで持っていかれた。
 この機械を据えつける基礎はもうちゃんと出来ていた。機械はその上にせられた。うまくボルトの中にはまらないらしく、盛んにハンマーの音がかんかん鳴った。
 その震動は、ぼくのところまでもきびしく響いてきた。
「おや、これはいけないぞ!」
 ぼくは気がついた。たいへんなことが起りかけた。ぼくの身体が、穴から抜けそうである。
 あんまりがんがんやるからいけないのである。基礎がちゃんとうまく出来ていればよいのに、それが寸法すんぽうどおりいっていないものだから、ハンマーをがんがんふるわなければならないのだ。それは全くよけいな心配をぼくにかける。いや今となっては、単なる心配ではない。ハンマーがガーンと鳴るたびに、ぼくの身体は穴からそろそろと抜けていくのであった。
「おい、ねじが抜けるよ。誰か来てめてくれ」
 ぼくは人間に聞えない声で、一生けんめいに怒鳴どなった。
 仲間のもくねじたちは、きっとぼくの悲鳴を聞きつけたにちがいない。しかし、彼等の力ではどうすることも出来ないのだ。
 ガーン、ガーン、ガーン。
 っという間に、ぼくは穴からすっぽりと抜けてしまった。そして小さい声をたてて、コンクリートの床にころがった。頭のかどをいやというほどぶっつけた。ああ万事休す!
 ぼくは、又もや大きな悲しみのふちに沈んだ。床から機械の元の穴まではずいぶんはるかの上だ、つばさない身は、下からとびあがっていくことも出来ない。
 悲しみの中にも、ぼくはまだ少しばかりの希望をいだいていた。
 それは誰かがぼくのそばを通りかかって、ぼくが転がっていることに気がつくのだ。おや、こんなところにねじが落ちている。一体どこのねじが抜けたんだろうといって、その人が親切に、ぼくの入るべき元の穴を探してくれれば、ぼくはたいへん幸福になれるのであった。どうか、誰か技師さん、ぼくを見つけてくれませんか。
 しかし実際は、ぼくを見付けてくれる人間は一人もいなかったのである。運のわるいときには悪いことがかさなるもので、それから三十分ばかり経った後のこと、技師の一人がこつこつと靴音を響かせて、ぼくの転っている方へ歩いて来たが、その靴先がぼくの身体に当って、ぼくはぽーんと蹴とばされてしまった。
 なにしろ軽い身体のぼくのことであるから、たちまち床をごろごろと転った末、部屋の隅にあった木箱のこわれがつみあげてあるその下へもぐり込んでしまった。ああ、もう観念の外はない。再びあのりっぱな機械の穴へは戻れないことになってしまった。

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