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二、〇〇〇年戦争(にせんねんせんそう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 15:50:34  点击:  切换到繁體中文



   至急報告

“こっちは、軍団司令部だ”
 合言葉の交換がすむと、司令部の通信兵は、名乗りをあげた。
“おう、しめた。こっちは、カモシカ中尉どのからの速達報告だ”
“なに、速達?”
“いや、ちがった。至急報告だ。そっちは、たしかに軍団司令部にちがいないだろうね。お前のところは、敵のスパイ本部じゃないのか。商売上、Z軍団司令部らしい顔をして、返事をしているんだったら、後でわしは叱られて迷惑するから、今のうちに、スパイならスパイと、名乗ってくれ……”
“なんだと。さがれ”
“なにィ。下れとは、何か”
 横で、全身をこわばらせて、怪物隊を凝視していたカモシカ中尉は、おどろいた。
「おいおい、モグラ下士。司令部は、まだ出ないのか。生死の境に、秘密無電を打って喧嘩けんかをしちゃいかんじゃないか」
「はい。そうでありましたナ。どうやら司令部の有名な怒り上戸じょうごのアカザル通信兵が出ているようです。司令部であることに、まちがいはないようです。なにしろ、こういう重大報告は、念には念を入れないと、いけませんからなあ」
「そうと決まったら、はやく打電しろ。ぐずぐずしていると、敵の怪物隊はこっちへ攻めてくるかもしれないぞ」
「はい、はい。――おや、司令部が引込んでしまった。どうも気の短い奴だ。あのアカザル通信兵という男は」
 モグラ下士は、また、きいきいと呼び出し信号を出した。
“おい、軍団司令部か。こっちへ挨拶もしないで、引込んじまっちゃ、困るじゃないか。手間どっているうちに、こっちが敵の砲弾で粉砕されちまや、貴重にして重大なる戦況報告が司令部へ届かないことになるじゃないか。そうなると、わが軍の損害は急激に――なに、早く本文を喋れというのか。さっきから、喋ろうと思うと、意地わるく、貴様の方で、邪魔をするんだ。いいか、さあ喋るぞ”
 とモグラ下士は、大きなせきばらいをして、“挺進せきていしんZ百十八歩兵中隊報告! われは、本地点において――本地点というのは、一体どこなんだか、こっちには、よくわからないから、そっちで方向探知してくれ、いいか――右地点において、敵の怪物部隊に対峙たいじして奮戦中なり。敵の怪物部隊の兵力は約一千十五名なり……”
 と、敵一千名だけ、さばを読んで、
“――その怪物は、いずれも、重圧潜水服を着装せるところより推定するにいずれも海軍部隊なるものの如きも、ここに不可解なることは、彼等怪物はロケット爆弾の中にひそみて飛来したものであって、その結果より見れば、あたかも空中に海がありて、そこより飛来したものと推定されるも、なぜ空中に海があるのか、わしにも分らない、中隊を率いるカモシカ中尉にも、おそらく分っちゃいないだろう……”
 カモシカ中尉は、おどろいて、また傍から、モグラ下士の横腹をついた。
「おい、報告に、議論は不用だ。見て明かな事実だけを、簡潔に打電するのだ。――怪物どもが、こっちの方を透かして見ているぞ。早く無電を切り上げないと、危険だ」
「はい、わかりました」
 モグラ下士は、また無電報告をはじめた。
“さっきの続きだ。いいかね。――敵はいずれも全身から蛍烏賊ほたるいかの如き青白き燐光りんこうを放つ。わしは幽霊かと見ちがえて、カモシカ中尉から叱られた。敵は、その怪奇なる身体をうごかしてカモシカ中尉とモグラ一等下士の死守する陣地に向い、いま果敢なる突撃を試みようとしている。この報告は、恐らくわが陣地よりの最後の報告となるべく、われらの壮烈なる戦死は数分のちに実現せん。金鷲勲章きんしゅうくんしょうの価値ありと認定せらるるにおいては、戦死前に、電信をもってお知らせをう。スターベア大総督に、よろしくいってくれ。報告、おわり。どうだ、こっちの喋ったことは、分ったか”
“……”
 司令部の通信兵からは、何の応答もなかった。モグラ下士が、気がついてみると、いつの間にやら、背中の無電機から出しているはずの電波がとまっていた。
(無駄なお喋りをしていたんだな)
 と、気がついて、幾度いくたびもスイッチを入れ直してみたが、機械はもう役に立たなかった。いつの間にやら、故障になっていたのである。
「中尉どの。無電機が……」
 と、モグラ下士が、叫んだとき、その声を、おさえるようにカモシカ中尉が、彼の腕をつよくつかんだ。
「おい、あれを見ろ。第一要塞は、とくの昔に敵に、占領されていたんだ」
「えっ、占領されましたか」
「ああ、あれを見ろ。要塞の上に、敵の旗が、ひらひらと、はためいているぞ」
「どこです。闇夜に、要塞の上にたった旗が見えるのですか」
「見えるじゃないか。もっと、こっちへ寄ってみろ」
 カモシカ中尉にいわれて、モグラ下士がその方へ頭を寄せてみると、なるほど、おどろいたことに、要塞のうえに、旗が見える。しかも、その旗には骸骨がいこつの印がついているのが、はっきり見えた。
「あっ、骸骨の旗! あれは、アカグマ軍には見当らない旗印ですね。一体どこの国の旗ですかねえ」
「さあ、おれにも分らない」
 と、中尉は、吐き出すようにいったが、
「だが、あの旗が、怪物隊のものであることは、はっきりわかるじゃないか」
「そうですかねえ。なぜですか、それは……」
「なぜって、あの旗も、蛍光を放っているじゃないか。怪物の身体も、あのとおり、蛍光を放っている。だから、あの旗は、あの怪物どもの旗だということが、すぐ諒解できるじゃないか」
「な、なるほど」
 そういっているとき、中尉は、おどろきの声をあげた。
「あっ、怪物どもが、こっちへ向って歩きだした。おれたちを見つけたのかもしれんわい、早く、おれたちは死骸の真似まねをするんだ」
 怪物隊は、何思ったかぞろぞろと、中尉の方へ歩いてくる。


   女大使の身辺

 第一岬要塞は、怪兵団のために占領せられてしまった!
 その飛報は、スターベア大総督を、椅子のうえから飛びあがらせるほどひどくおどろかせた。
 大総督は、直ちにエレベーターを利用して、地下二〇〇メートルの本営第〇号室に入った。
 そこは、ものすごいほど複雑な機械類にとり囲まれた密室だった。
 潜水艦の司令塔を、もっと複雑に、そして五、六十倍も拡大したような部屋であった。電源もあれば、通信機もそろっているし、敵弾の防禦壁も完備していたし、地上及び地下における火器の照準や発射をつかさどる操縦装置も、ここに集まっていた。通風機、食糧庫、弾薬庫も、その真下に、相当広い面積を占めていた。だから、万一、地上がことごとく敵の手におちようとも、この地下本営一帯は、大要塞として独立し、侵入軍との間に、火の出るような攻防戦が出来ることは勿論もちろん、長期の籠城ろうじょうにも耐え、本国のレッド宮殿との連絡も取れ、ワシリンリン大帝とも電話で話ができるように構築されてあった。その昔のマジノ要塞にしても、ジークフリード要塞にしても、このアカグマ地下本営にくらべると、玩具がんぐのようなものだった。
 スターベア大総督のかけている椅子の前には、映画館の飾窓かざりまどにスチール写真が縦横に三十枚も四十枚も貼りつけてあるように、さまざまな写真が貼り出してあった。
 いや、それはただの写真ではなかった。どの写真も、しきりに動いていた。多くは風景のようなものがうつっていたが、部屋の中の写真もあった。いずれも皆、映画のように動いていた。
 映画ではない、テレビジョンである!
 地上と地下とを問わず、戦場と味方の陣営とを問わず、重要な地点において現在どんな事件が起っているかは、すべてこのテレビジョンによって明かにされていた。
 中には戦場を疾駆しっくする戦車の中から、外をうつしているのもあって、ときどき、スクリーンが、ぱっと赤くなって、何にも見えなくなることがあったが、それは、そのテレビジョン送影機を積んだ戦車が、敵の爆弾か砲弾にやっつけられて、テレビジョンの機械もろとも、粉砕してしまうためだった。
 赤外線を利用しているので、テレビジョンのスクリーンを通じて、夜の戦場が、昼間とまったく違わないほど明るく見えていた。
 そのテレビジョンは、同時に、無線電話装置も持っていて、スターベア大総督は、スクリーンの上の人物と話をすることも出来るのであった。
 いま大総督は、スクリーンにうつったZ軍司令官と、重大な会話をとりかわしている。
「なんじゃ、なんじゃ、なんじゃ」
 と大総督の機嫌は、はなはだ斜めであった。
「はあ、はあ、はあ」
 Z軍団司令官は、ただもう恐れ入っている。
「貴官を頼みにしていたばかりに、作戦計画は根柢こんていから、ひっくりかえった。第一岬要塞が奪還できなければ、貴官は当然死刑だ。どうするつもりじゃ」
「はあ、もう一戦、やってみます。が、なにしろ、敵は何国の軍隊ともしれず、それに中々手剛てごわいのであります」
「あの、骸骨の旗印からして、何国軍だか、見当がつかないのか」
「はあ、骸骨軍という軍隊は、いかなる軍事年鑑にも出ていませんので……」
「そりゃ分っとる。しかし、何かの節から、何処どこの軍隊ぐらいの推定はつくであろうが……」
「はあ」
 と、スクリーンのうえのZ軍団司令官は、女のように、もじもじと身体をくねらせていたがやがて大決心をしたという顔付になって、
「大総督閣下。では、小官から一つのお願いをいたします」
「願い? 誰が今、貴官の願いなどを、聞いてやろうといったか」
「いえ、いえ。閣下のおたずねの件を、小官のお願いの形式によって、申し述べます。でないと、万一、間違った意見を述べましたため、銃殺にあいましては、小官は迷惑をいたしますので……」
「ふん、小心な奴じゃ。じゃあ、よろしい。貴官の希望するところを申し述べてみろ」
「はい、ありがとうございます」
 と、司令官は、うれしそうに、スクリーンの中から、ぴょこんとお辞儀じぎをして、
「では、早速申上げます。小官のお願いの件は、こういうことでございます。どうか、閣下の御命令によりまして、キンギン国の女大使ゴールド女史の身辺を御探偵ねがいたいのであります」
「なに、ゴールド大使の身辺を探れというのか。それはまた、妙なことをいい出したものじゃ」
 と、大総督は、太いひげを左右へ引張って、首をふったが、
「よろしい、その願いは聞き届けた。早速しらべさせて貴官にも報告しよう。もう、下ってよろしい」
 スイッチは切られ、司令官の姿は、スクリーンから消えた。
 とたんに、別のスイッチが入れられ、秘密警察隊の司令官ハヤブサに、ゴールド大使の身辺調査の命令が与えられた。
「ああ閣下。ゴールド大使の身辺は、只今、隊員をして監視中でございます。なにしろ、この前のお叱りもありましたので、あれからぐ、ゴールド大使に、わが腕利うでききの憲兵をつけてこざいます」
「そうか、それは出来が悪くないぞ。では、すぐ報告ができるだろうな」
「はい、それは勿論、出来ます。では、直ちに、かの憲兵の持っている携帯テレビジョンからの電流を、閣下の方へ切りかえます」
「そうしてくれ。早くやるんだぞ」
「はあ」
 声の終るか終らないうちに、スターベア大総督の前の、別のスクリーンのうえに、キンギン国大使ゴールド女史の居間がうつりだした。
 女史は、只一人居間にいて、テーブルのうえで、なにか丸いものを、しきりにいじくりまわしている。
「おい、大使は、何をいじくりまわしているんだ」
 と、大総督が、スクリーンの中のハヤブサにいた。
「えへへへ。女大使が手に持っていますのは、彼女の例の義眼でございますよ」
「なに、義眼? ああ、そうか。義眼を手に持って何をしているのかね」

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