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毒瓦斯発明官(どくガスはつめいかん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 12:56:34  点击:  切换到繁體中文


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 ……筆勢ひっせいあまっておどし文句をつらねてはみたが、ここで金博士が、間髪かんぱつれず、顔にあたった大蜘蛛おおぐもを払いのけ、きゃあとかすうとかいってくれれば、作者も張合はりあいがあるのであるが、当の博士は、別におどろきもなにもしない。はなはだ張合いのない次第であった。
 愕くどころか、博士は、矢庭やにわに手をのばして、その大蜘蛛の胴中どうなかをつかんだものである。
 すると、ガラガラと、ラジオの雑音のようなものが聞えた。
 金博士は、つかまえた大蜘蛛を口のところへ持って行き、声を一段と低くして、
「おい醤買石、今すぐわしは、お前の居る屋上へ上っていくから、すこし待って居てくれ。しかしお前も、こんどというこんどは余程よほどりたと見え、屋上から、蜘蛛に見まがうような擬装ぎそうのマイクと高声器をつり下げて、わしに話しかけるなんて、中々機械化してきたじゃないか、はははは」
「いや、ちとばかりソノ……」
「しかし、この無細工な蜘蛛を屋上からこの人通りの多い通りにり下ろすなんて、やっぱりお前は、あかぬけのしないことおびただしい。この次からは、もっといい智慧を働かすがいい」
 められたと思った醤は、とたんにぺちゃんこにやっつけられた。
 さて、ここは屋上である。例の洋酒店のあるビルの屋上であった。
 のっそりと、非常梯子ひじょうばしこからあがってきたのが金博士であった。非常梯子の上り口に立って、うやうやしく挙手きょしゅの礼をして立っている二人の白いターバンに黒眼鏡に太いひげ印度人巡警インドじんじゅんけい! 脊の高いせた方が醤買石しょうかいせきで、脊が低く、ずんぐり肥っている方が、醤が特選して連れてきた前途有望な瓦斯師長ガスしちょう燻精くんせいであった。二人は、まるで舷門げんもんから上って来た司令官を迎えるように、きわめてげんたる礼をもって金博士に敬意をひょうした。
 博士は、几帳面きちょうめんに礼をかえすどころか、いきなり醤の瘠せた肩をどんと叩いて、
「おい、ウィスキーにペパミントの約束、あれはまちがいないじゃろうな。一本が五百元もするぜ。お前そんなに金を持っとるか」
 と、無遠慮ぶえんりょな問いを発した。
「や、それはもう大丈夫です。御承知のとおり、昔からイギリスと深い関係がありますものですから、武力こそ瘠せ細っていますが、黄金であろうとダイヤモンドであろうとウィスキーであろうと、そんなものは、うんとストックがあります」
「ほ、ん、と、ですか」
「もちろん本当です。くにやぶれて洋酒ありです。もっとも早いところストックにして置いたのですがね……しかし博士せんせい、毒瓦斯の方のことですが……」
「うん、毒瓦斯なんて、他愛たあいもないものじゃ。ウィスキーになると、そうはいかん」
「いや博士せんせい、ウィスキーなんてびるほどあります。毒瓦斯の研究となると、そうはいかん」
「よろしい、バーター・システムで取引しよう。一体どんな毒瓦斯が入用いりようか。フォスゲン、ピクリンサン、ジフェニルクロルアルシン、イペリット、カーボンモノキサイド、どれがしいかね」
 下は人工灯じんこうひの海、上は星月夜ほしづきよ、そして屋上は真暗まっくらだった。その真暗な屋上に立って、金博士は大きく両手をひろげる。
「そんなものは、どれも欲しくありません」
 醤は人一倍大きな頭を左右に振る。
「ほう、これじゃ気に入らんのか」
博士せんせい――いや私の欲しいものは、そんな従来じゅうらいから知れている毒瓦斯ではありません。そんな毒瓦斯は、吸着剤きゅうちゃくざい活性炭かっせいたんと中和剤の曹達石灰ソーダーせっかいとを通せばさえぎられるし、ゴムゴム手袋ゴム靴で結構けっこうけられます。そういう防毒手段のわかっている毒瓦斯は、今じゃどこへ持っていっていても、効目ききめがありません。もっとよく効く、目新らしいものがいいですなあ」
 南京虫退治ナンキンむしたいじ新剤しんざいを探しているようなことをいう。
 博士は、別段困った顔もせずにうなずき、
「わしのところには、どんなものでもあるよ。今お前のいった防毒面をどんどん通して、今までの防毒面じゃ役に立たない毒瓦斯があるがこれはどうじゃ」
「それはいいですなあ。しかしそれは○○○、○○○○○じゃないのですか」
「ほう、それを知っているか。この種のものはドイツと○○だけが持っているので、従来の防毒面ではまるで防ぐ力がない」
「しかし博士せんせい、それも駄目ですよ。なぜといって、他の国には無いかもしれないが、ドイツなどには、その超毒瓦斯ちょうどくガスを防ぐ仕掛をちゃんと持っている。そういう防ぐ手段のあるものは全然駄目です。私は、全然防ぐ用意のない毒瓦斯が欲しいのです。博士、ぜひお力をお貸しねがいたい」
 醤は、熱心をおもてにあらわしていった。
「ほうほう、だいぶん熱心じゃが、それもあるにはある。しかしこれを教えるには、大分高価こうかにつくが、いいかね。まずウィスキーならダースいり函単位はこたんいでないと取引が出来ないが……」
「ダース函でも何でも提供しますとも」
「ほい、お前にも似合わん、えらく気が大きいじゃないかい」
博士せんせい、わしの報復ほうふくるかどうかという瀬戸際せとぎわなんです。あに真剣にならざるをんやです」
「そうか。なら、よろしい。ちょっとここに出してみようか」
「あ、待ってください。それはあぶない。ここで出されたんでは、私が死んでしまうじゃないですか。そればかりは遠慮します」
「なにをうろたえとるか。出すといっても、本当の毒瓦斯を出すとはいっておらん。こういう毒瓦斯があるという話をしようかという意味でいったのじゃ」
「ああ、そうでしたか。やれやれ安心しました。とにかく博士せんせいと来たら、きょうが乗れば、敵と味方との区別なんかもう滅茶苦茶めちゃくちゃで、科学の力を残酷ざんこくに発揮せられますからなあ。これまでに私は、博士のそのやり方で、ずいぶんにがい体験をて来たもんです」
「醤よ、科学は残酷なものじゃよ。わしはそう思っとる。だから人間は出来るだけ早く科学を征服しなければならないのじゃ。ドイツに於ては――」
「博士、ドイツの話はもう沢山です。それで私のお願いは、ここに立っている腹心ふくしんの部下で、新たに毒瓦斯発明官に任じました燻精を一週間だけお預けいたしますから、その期間にこの男に対し、新毒瓦斯研究の方針とか企画とか設備とか経費とか、ありとあらゆることを吹きこんでいただきたい。私は、この男の帰還を待って、早速さっそく全世界覆滅ふくめつの毒瓦斯を発明する鬼として、全力をあげ全財産をげうって発明官と一緒にやるつもりです」
 醤は、満天の星を吸いこもうとするのではないかと思われるような大口をあいて、芝居気たっぷりに、途方もない重大決意をわめき散らしたのであった。
「ええ加減にしろ。大言たいげんよりは、ウィスキーじゃ。ペパミントじゃ」
 金博士が、醤に負けないような大きな声を出し、おこった蟷螂かまきりのような恰好かっこうで、拳固げんこで天をつきあげた。

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