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毒瓦斯発明官(どくガスはつめいかん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 12:56:34  点击:  切换到繁體中文

底本: 海野十三全集 第10巻 宇宙戦隊
出版社: 三一書房
初版発行日: 1991(平成3)年5月31日
入力に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷
校正に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷

 

   1


 あつい或る夜のこと、発明王金博士きんはかせは、そでのながい白服に、大きなヘルメットをかぶって、飾窓かざりまどをのぞきこんでいた。
 南京路ナンキンろ雑沓ざっとうは、今が真盛まっさかりであった。
 金博士の視線は、さっきから、飾窓の小棚こだなにのせられてある洋酒の群像にくぎづけになっている。いや、正しくいえば、その洋酒のびんにぶら下げられた値段札の数字に釘づけになっていたという方がいいだろう。
「あはは……」
 博士がとつぜん声をあげた。これは決して博士が笑ったのではない。実は大歎息だいたんそくをしたのである、あははと……。およそ歎息というものは、感極かんきわまってその窮極に達すればあたかも笑声のような音を発するものである。嘘だと思ったら、読者は御自分でためしてみられるがよろしかろう。
「あはは、あの味のわるいウィスキーが一壜五百げんとは、べら棒な値段じゃ。その昔、重慶相場じゅうけいそうばというのがあったがその上をいく暴価ぼうかじゃ。同じ五百元でも、こっちのペパミントがいい。こいつを、氷の中に叩きこんで、きゅっきゅっとやると、この殺人的暑さは嵐にあった毒瓦斯どくガスの如く逃げてしまうことじゃろうが、それにしても五百元とは高い、今のわしの財政ではなあ」
 金博士は、このごろアルコールに不自由をしている上に、金にも困っていると見え、さてこそ極限歎息きょくげんたんそく次第しだい相成あいなったらしい。
 丁度ちょうどそのときであった。金博士の頭を目がけて、一匹の近海蟹がざみのようによくえた大蜘蛛おおぐもが、長い糸をひいてするすると下りてきた。そして、もうすこしで、金博士のヘルメットにぶつかりそうになって、ようようさがるのを停めた。おそるべき大蜘蛛だ。こんなやつにくびのあたりを喰いつかれ、生血いきちをちゅっちゅっ吸われたら、いかな頑固爺がんこおやじの金博士であろうと、ひとたまりもなかろうと思われた。
「もしもし金博士せんせい、おなつかしゅうございますなあ」
 とつぜん、その大蜘蛛が金博士に言葉をかけたのだった。冗談じょうだんじゃない……。
「うん」
 博士の鼓膜こまくに、その声が入ったのか、博士は生返事なまへんじをした。生返事をしただけで、彼はなおも飾窓の青いペパミントの値段札に全身の注意力を集めている。
博士せんせいは、いつに変らず御壮健ごそうけんで、おめでとうございます。この前、金博士にお別れをしてから、もうかれこれ五六年になりますなあ」
 その化け物のような大蜘蛛は、しきりに金博士をなつかしむのだった。これを横から眺めていると、博士もまた、蜘蛛の化け物じゃないかという疑いがいてくる。そういえば「新青年しんせいねん」誌上にのっている金博士の顔は、蜘蛛の精じみた風貌ふうぼうをもっているよ。
 閑話休題さて、金博士は、ようやく注意力の二割がたを、蜘蛛の声に向けていた。
「おう、そういうお前は醤買石しょうかいせきじゃな。お前はまだ生きていたんか」
 醤買石といえば、あの有名なる抗日遷都こうにちせんと将軍の名である。すると醤買石も、ついに人間の皮をかぶっては遷都する先がなくなって、遂に大蜘蛛に化けたのであるか。それとも、彼はオーストラリヤで戦車にのし烏賊いかられて絶命し、魂魄こんぱくなおもこの地球にとどまって大蜘蛛と化したのであるか。
「あれ、金博士せんせい。醤はそう簡単に死にませんよ。しかしとにかく、博士にお目にかかりたいばかりに、部下もつれずに単身、きびしい監視網かんしもうをくぐって、ようやくここまで参りました。そしてとうとう博士に行き会いまして、こんな嬉しいことはございません。ふふふふ」
 ふふふふは、醤の笑い声ではない。感激の泣き声である。泣き声がその極致に達すれば笑い声に似たる――ああもうその解説はよろしいか。なるほど前にも鳥渡ちょっと書きましたなあ。
「泣くなよ、醤。お前は小便小僧しょうべんこぞう時代から泣きべそじゃったな。東にくすのきの泣き男あり、西に醤買石ありで、ともに泣きの一手ひとてで名をあげたものじゃ。で、わしに会いに来たというのでは、また何か大それた無心じゃろう」
 金博士は、やっぱり前跼まえかがみになって、飾窓の中をのぞきこみながら口を動かした。博士は、まさか頭の上に忍びよったる大蜘蛛と話をしているのだとは気がついていない様子に見えた。
「やあ、そのとおり、それが図星ずぼしでございますよ。――いや小生しょうせいはこのたびぜひとも博士せんせいにお願いをして、毒瓦斯どくガスをマスターいたしたいと決心しまして、そのことで遥々はるばる南海の孤島ことうからやって参りました」
「毒瓦斯の研究か。そんなむずかしい金のかかるものは、お前のがらじゃないぞ」
「いえ博士せんせい、そう仰有おっしゃらないで、是非にお願いいたします。今こそ孤島に小さくなっていますが、昔日せきじつの太陽を呼び戻すには、猛毒瓦斯を発明し、その力によってやるのでないと全く見込みなしとの結論に達し、博士におすがりに参りました。ぜひともこの醤をあわれと思召おぼしめし……その代り、お礼の方はうんときばり、博士のお好みのものなれば、ウィスキーであろうとペパミントであろうと……」
「そうか。それは本当じゃな。男の言葉に二言にごんはないな――というて相手がお前じゃ仕様しようがないが……」
 といいながら、博士は飾窓から顔を放して腰を真直まっすぐにのばしたものだから、さっきかられ下っていた大蜘蛛が一揺ひとゆれ揺れると、博士の顔へぴしゃと当った。さあたいへん、あやういかな博士の一命! 生かまたは死か?

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