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超人間X号(ちょうにんげんエックスごう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:50:25  点击:  切换到繁體中文


   帰ってきた博士


 死刑囚の死体紛失事件があってから、二カ月ばかりたった後のことである。
 三角岳附近(さんかくだけふきん)は、急に秋もふかくなった。附近の山々は、早くも衣がえにうつり、今までの緑一色の着物を、明かるい黄ばんだ色や目のさめるような赤い色でいろどった美しい模様のものに変えはじめた。
 そのころのある日。
 とつぜん谷博士が、この研究所へ戻って来た。
 もちろんこの三角岳の研究所は、すぐる日の大爆発でなかば崩壊(ほうかい)し、それにつづいて怪(あや)しい機械人間のさわぎでもって、この研究所はいよいよ気味のわるい危険なものあつかいされ、村人たちもだれ一人ここには近づかず、雨風にさらされ、荒れるにまかされていたのであった。
 ただ、この方面の登山者たちの目に、谷研究所の半崩壊の塔(とう)が、怪しくうつらないではすまなかった。
「あのすごい塔は、どうしたんだね」
「へえ、あれは谷博士さまの研究所でございましたがね。なんでも雷(かみなり)さまを塔の上へ呼ぶちゅう無茶(むちゃ)な実験をなさっているうちに、ほんとに雷さまががらがらぴしゃんと落ちて、天にとどくような火柱(ひばしら)が立ちましたでな、それをまあ、ようやく消しとめて、あれだけ塔の形が残ったでがす。博士さまの方は、目が見えなくなって、それから後はどうなったことやら。おっ死んでしまったといううわさもあるが、いやはやとんでもねえことで、そもそも雷さまなんかにかかりあうのが、まちがいのもとでがす」
 山の案内人は、こんなふうに説明するのであった。
「それはすごい話だ。時間があれば、ちょっとよって見物したいが、あいにく行く余裕がない。せめてあのすごい塔を、カメラへおさめていこう」
 と、写真機を塔へ向ける。
「よし、君が写真をとるあいだ、ぼくは、双眼鏡(そうがんきょう)でちょっくら見物しよう」
 一人は八倍の双眼鏡を目にあてて、塔に焦点(しょうてん)をあわせる。
「ほほう、双眼鏡で見ると、いよいよすごい塔だ。……おや、あの塔にだれかいるね。人間がひとり、塔の中を歩いているよ」
 双眼鏡の男が、そういう。すると案内人がぴくんと肩をふるわせた。
「だんな、ほんとうですかい。ほんとに人間があの塔の中にいますか」
「いるとも。ちゃんと見える」
「はて、何者かしらん。このあたりの衆(しゅう)はだれひとり近づかないはず。だんな、その人はどんな姿をしていますか」
「ちゃんと服を着ているよ。頭のところに白い布で鉢巻(はちま)きをしている。鉢巻きではなくて繃帯(ほうたい)かもしれんが……。ちょいと君、これで見てごらん」
 そこで案内人は、双眼鏡を貸してもらって目にあてた。ようやく視野(しや)に、その疑問の人物がはいって来た。
「やあ、あれは谷博士さまだ。博士さまは、ご無事だったのけえ」
幽霊(ゆうれい)かもしれんよ」
「待った、だんな。このお山の中で幽霊なんていっちゃならねえ。お山が、けがれますからね」
「でも、君が塔の中の人を見て、あまりふしぎがっているからさ」
「いや、博士さまにまちがいはねえ。これは土産ばなしができたわ」
 たしかにその人物は、ほんとに生きている人間であって、幽霊ではなかった。
 谷博士さまが研究所の中を歩いていなさった――というニュースは、たちまちそのあたりの村々へ伝わった。
「博士さまは、これからどうするつもりかの」
「金になるものは売って金にかえ、三角岳から引きあげるのじゃなかろうか。あんなにこわれては、直しようもないからねえ」
「もう、それに、こんどというこんどは、雷さまの天罰(てんばつ)にこりなさったろう」
 村人たちがそんなうわさをしているとき、谷博士が村へひょっくり姿をあらわしたので、みんなびっくり仰天(ぎょうてん)。
「みなさん、しばらくごぶさたをしました。あのときはたいへん心配をかけて、すまんことじゃった。こんどは一つみなさんにお礼をしたいと思って、研究所へ帰って来ましたから、どうぞよろしく」
 博士は繃帯を巻いている頭をさげた。
「まあまあ、博士さま、なにをおっしゃいます。そんなごていねいな挨拶(あいさつ)じゃ、みんなおそれいります。あのときは大してお役にもたてず、すみませんでした」
「いや、それどころじゃない。えらいことみなさんにごめいわくをかけました。ところでこんどわしは雷(らい)を使う研究はぷっつりやめて、あの研究所からべんりな機械を製造しますわい。そこで職工(しょっこう)さんを二十名と雑役(ざつえき)さんを十名雇(やと)いたいのじゃ。給料は思いきって出しますから、希望の人は、どんどんわしのところへ申しでてくだされ。その製造事業がさかんになると、しぜんこのへんの村々へも大きな金が流れこむことになりますわい。ぜひとも力を貸してくだされや」
 博士は、そういって、みんなに協力を頼んだ。


   機械人間(ロボット)の生産


 博士が、こんど製造工場を起こすについて人を雇うからどうぞ来てくださいと頼んだのは、一カ村ではなく、そのあたり四里四方の全部の村々であった。
 昔の博士を知っている者の中には、めんくらった者がすくなくない。というのは、博士はその昔、研究所長として、はなはだ横柄(おうへい)であった。たまに博士と行きあって、こっちからあいさつの声をかけても、博士はじろりと、けわしい目を一度だけ相手に向けるだけで、礼をかえしもしなかった。
 じろりと見られるのは、まだいい方で時には博士はまったく知らぬ顔で行きすぎることさえあった。だから村人は、博士のえらいことを尊敬していても、博士をしたう心を持つ者はいなかった。
 学者という者は、こんなにごうまんなものであって、農夫(のうふ)や炭焼(すみや)きなどを相手にしないものだと、昔からのいいつたえで、そう思っていたのだ。
 ところが、こんど博士は、いやに腰がひくくなった。だから、昔を知っている者たちはおどろいたのである。おどろいて、顔を見あわせた。ものはいわなかったけれど、目つきでもって、村人はおたがいにいいたいことを察(さっ)した。
(博士さまは、えらくかわったでねえか。えらく腰がひくくなっただ)
(ほんに、そのことだ。どうしたわけだんべ)
(ああ、分かった。このまえ、ほら、あの研究所の塔(とう)さ、雷(かみなり)さまのためにぶっこわされてから、心がけがすっかりかわって、やさしくなったんだろう)
 村人は、そのくらいのことを考え、その先を考えなかった。なぜ博士が急にこう物腰(ものごし)がひくくなったかについて、もっと深く考えることをしなかったのだ。素朴(そぼく)な村人たちは、博士が自分たちを友だちのように、したしげに話しかけてくれることにたいへん満足をおぼえた。そのうえに、こんど博士が、大きな金もうけをさせてくれるといったのにたいし、好感(こうかん)をよせたのだ。村人は、博士をとりまいて、遠慮(えんりょ)のない話をとりかわした。
「博士さまは、この夏の爆発のとき、目が見えなくなったちゅうこんだが、今はどうでがす。よく見えなさるかの」
 博士は、ぎくりとして、両手で自分の両眼をおさえた。
「おお、そのことだ。……いや、心配をかけたが、わしの目も今はすっかり直(なお)って、よく見えるようになった。安心してください」
「それはけっこうなこと。目が不自由だと、一番つらいからの」
「そうじゃ、そうじゃ」
 博士はうなずいた。
「博士さまの、その頭の鉢巻(はちま)きは、どうしたのけえ」
作十(さくじゅう)よ。おまえ、ものを知らねえな。博士さまが頭に巻いているのは鉢巻きではない。あれは繃帯(ほうたい)ちゅうものだ」
「繃帯ぐらい、わしは知っているよ。繃帯のことを略(りゃく)して鉢巻きというんじゃ」
強情(ごうじょう)だの、おまえは」
「博士さま、その頭の繃帯は、どうしなすったのじゃ」
 それにたいして、博士は次のように答えた。
「この繃帯は、じつは悪性の腫物(はれもの)ができたので、そこへ膏薬(こうやく)をつけて、この繃帯で巻いているのです。悪いおできのことだから、いつまでも直らなくて、わしも困っていますわい」
「そんなところへできるできものは、ほんとにたちがよくないから、くれぐれも気をつけなされや。そうだ。ふもと村の慈行院(じぎょういん)へいって、お灸(きゅう)をすえてもらうと、きっと直る」
「うんにゃ、それよりも鎮守(ちんじゅ)さまのうしろに住んでいる巫女(みこ)の大多羅尊(だいだらそん)さまに頼んで、博士さまについている神様をよびだして、その神様に“早う、おできを直すよう、とりはからえ”と頼んでもらう方が、仕事が早いよ」
「いや、みなさんのご親切はうれしいが、わしは十分の手あてをしているから、ご心配はいらん。それでは、雇人(やといにん)のことを頼みまするぞ」
 そういって博士は、帰っていった。
 博士の希望したとおりの雇人の人数は、まもなくそろった。
「わしは職工(しょっこう)の仕事なんか、生まれてはじめてじゃが、それでも雇ってくれるかな」
「わしも職工というがらではないが、ええのかね」
「いや、けっこう。みなさん、けっこう。みんな雇います」
 博士は、まず塔の壁を修理し、雨のはいらないようにした。それから地下室から、いろいろな工作機械るいを上へはこばせて、仕事のしよいように並べた。
 それから素人職工(しろうとしょっこう)たちにたいし、博士は工作機械の使いかたをおしえた。
 山の中の、まったく素人の農夫や炭焼きだった人たちが、博士の指導によって短い期間のうちにびっくりするほどりっぱな職工になった。
「うれしいなあ。わしは、こんなりっぱな機械を使いこなせるようになった」
「わしもうれしいよ。とにかくふしぎな気がする。わしは生まれつき不器用(ぶきよう)で、死んだ父親からさんざんと叱(しか)られたもんじゃったがのう」
「なんだかしらんが、なにかがわしにのりうつって、うまく作業をこなしていってくれるような気がしてならん。わしの力だけとは、どうしても思われんな」
「おれも、そういう気がする」
「ばかをいえ。そんなことがあってたまるか。やっぱりおれたちの技術者としての腕があったんだ」
 この会話の中には、なぞのことばが、ところどころ頭を出していた。そのなぞが持つ秘密が、やがてとける日が来たとき、この素人職工たちはびっくり仰天(ぎょうてん)しなくてはならなかった。
 それはとにかく、谷博士が新しくつくったこの山の中の製造工場からは、まもなくりっぱな製品がどんどん出るようになった。その製品は、なんであっただろうか。
 それは機械人間(ロボット)であった。
「仕事をやらせるにべんりな機械人間をお買いなさい。畑の仕事でも、遠いところからの水くみでも、なんでもやります。しかも、人間の十人分は働きます。一台わずか五千円。二百円ずつの月賦販売(げっぷはんばい)も取りあつかいます。一週間のためし使用は無料です。三角じるしの機械人間工場」
 こんな文句からはじまって、美しい絵ときをしてあるポスターが、ほうぼうの町や村にくばられた。
 一週間ただで、ためしに使用してもよろしいと書いてあるので、それを申しこむ者がどの村でも一人や二人はあった。
 申しこむと、機械人間工場(ロボットこうじょう)から、すぐさま機械人間がとどけられてきた。工場からは販売員がついて来て、使いかたをおしえる。そこで使ってみると、なかなかべんりでもあり、また人間の十倍も仕事をする。これはいいということになって、一度ためした人は、みんな機械人間を買う。
 買えば、近所の人がめずらしがって、それを見物に集まってくる。なるほど、これは重宝(ちょうほう)だというので、こんどは何人もたくさん名まえをつらねて「買います」と申しこむ。
 そんなわけで、谷博士の製造工場の経営は大あたりであった。
 そのために、あたりの村や町の人は、博士さまをたいへんありがたく思い、もう昔のような悪口をいう者なんかいなかった。

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