您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 海野 十三 >> 正文

地球要塞(ちきゅうようさい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:37:28  点击:  切换到繁體中文


   黄いろい煙――おそるべし超溶解弾ちょうようかいだん


 久慈が、ワシントンの監察隊によって襲撃されたのだ!
 汎米連邦からは、一人の外国人もあまさず追放されたのに、久慈は、大胆にも、ひそかにワシントンの或る場所に、とどまっていたのである。私の無電通信が、運わるく、警備軍のために発見されてしまった。彼は果して、無事に逃げ終せるであろうか。私は、胸に新たな痛みをおぼえた。
 高声器こうせいきが、がくがくと、ひどい雑音をたてた。
「おや、まだ、向うのマイクは、生きているな!」
 と、私は、思わず目をみはった。
 とたんに、高声器の中から、久慈ではない別人の声がとびだした。
「おや、誰もいない。たしかに、この部屋の中に怪しい奴がいたんだが……」
「おかしいなあ。逃げられるわけはないのですがねえ」
 と、これは、また別のこえだった。
 久慈は、監察隊の眼から、のがれているらしい。どこにひそんでいるのか、それともうまく逃げ終せたのか。
「もっと探せ。おや、その書棚しょだなのうしろが、おかしいぞ。黄いろい煙が出ている。やっ、くさい!」
「書棚のうしろですか。よろしい、書棚をのけてみましょう」
 二人のこえが、遠のいた。
 数秒後、二人の驚いたこえが、再び高声器の中に入ってきた。
「あっ、ここから逃げたんだ。鉄筋コンクリートの壁に、こんな大きな穴が開いている。これは、今開けた穴だ。それにしては、この黄いろい煙がへんだ。合点がいかない」
「わかったわかった。もっと奥の方の壁に、穴を開けているんだ。よオし、二人して、とび込もう」
「待て! とびこむのは、あぶない。この穴の開け方は尋常じんじょうでない。相手はたいへん強力な利器りきをもっているぞ。とびこんではあぶない」
「だが、もう一息というところだ。では、自分が入る!」
「よせ、あぶないぞ」
「なあに、これしきのこと!」
「あっ、とびこんでしまった!」
 と、穴の開き方に、疑いをもらしていた一人の監察隊員は、絶望の叫びをあげた。
 それから、更に数分後――
「おっ、この煙は何だ。やや彼奴きゃつの声らしい。ただならぬ声だ。さては、やられたか。――おお、そこに足が見える。待て、今、ひっぱり出してやる。うーんと……」
 残った隊員は、力を入れて、同僚の足をとって、穴から曳きだす様子!
「ややッこれは……。首が、とけてしまった! やっぱりそうだ。これはたいへん。噂にきいた超溶解弾ちょうようかいだんを使っているらしい。これは危い、すぐ本隊へ知らせなくては……」
 隊員の声が、引込むと、とたんに、高声器が割れたかと思うほどの、ひどい雑音がとび出し、そのまま高声器は鳴らなくなってしまった。
 私は、深い溜息ためいきをついた。
(久慈の奴、ついに超溶解弾を使ったか。使ったのはいいが、一切の証拠しょうこを、あそこに残してこなければいいが……)
 私は、心配であった。
 だが、いくらこっちで、心配をしてみても、向うのことが、どうなるものでもなかった。私は、一切をあきらめるしかなかった。
 私は、スイッチを切った。そしてまた階段をのぼって、夜空の下に立った。
 美しい夜だ。
 星明りばかりで、他に、なんの灯火あかりも見えない。視界のうちには、人工的な一切の光が、存在しないのであった。そしてこのクロクロ島のうえでは、自然はかくも美しいのであった。
 光ばかりではない。音さえない。
 浪の音さえ、聞えないのである。この島では、打ちよせる浪の音は、たくみに、補助動力ほじょどうりょくに使われ、そして音を消してあった。だから、時折、頬のあたりをかすめる微風そよかぜが、蜜蜂のささやくような音をたてるばかりだった。――この島では、光と音と、そして電磁波でんじはとが、すこぶる鋭敏えいびんに検出されるようになっていた。――
 かく物語る私とは、何者であろうか?
 名乗るべきほどの人物でもないが、もう暫く、読者の想像にまかせておこう。


   哨戒艦隊しょうかいかんたい――テレビジョンに映った影


 時間は流れた。
 クロクロ島の夜は、いたくけ過ぎて、夜光時計は、今や二十一時を指している。
 待っている第三回目の怪放送は、まだアンテナに引懸らないらしい。オルガ姫は、ずっと下に入りきりで報告に上ってこないのであった。
 いつもなら、もうとっくの昔にベッドに入る頃だが、今宵こよいは、なかなか睡られそうもない。
 久慈から聞いたついに汎米連邦に動員令が出たとの飛報は、私を強く興奮させてしまった。なかなかベッドに入るどころではない。こうべめぐらせば、今オリオン星座が、水平線下に没しつつある。私は、暫く、星の世界の俘虜とりことなっていた。
 階段を駈けあがってくる足音が聞えた。
 オルガ姫だ。
(さては、遂に、第三回目の怪放送が、キャッチされたか)
 と、私は、古びた籐椅子から、体を起した。
 やっぱり、それはオルガ姫だった。
「大至急、下へお下りになってください。この方面へ、怪しい艦艇が近づいてまいります」
「なに、怪しい艦艇が……」
 このクロクロ島のあるところは、各種の航路をさけた安全地帯なのである。ところが今、怪しい艦艇が近づきつつありと、オルガ姫は、報告してきたのであった。
 怪しい艦艇とは、いずくの国のものぞ。
 その詮議せんぎはあとまわしだ。今は、なにはもあれ、待避たいひしなければならない。私は、椅子から腰をあげた。
「姫、籐椅子とういすを、下にもってきてくれ」
「はあ」
「それから、後を頼むぞ」
「はい」
 私は階段を、くだった。
 つづいて、オルガ姫が椅子を持って、階段を駈け下りてきたと思うと、彼女はその足ですぐ配電盤のところへ、とんでいった。
 複雑なスイッチが、つぎつぎに入れられた。赤や白や緑やの、色とりどりのパイロット・ランプが、点いたり消えたりした。防音壁をとおして、隣室の機械室に廻っている廻転機のスピード・アップ音が、かすかに聞える。
 私たちの体は、なんの衝動しょうどうも感じなかったけれど、深度計しんどけいの指針は、ぐんぐん右へ廻りだした。
 室内の空気のにおいが、すっかりちがってきた、薬品くさい。もちろん、それは濾過層ろかそうを一杯にうずめている薬品の臭いであった。
「三隻よりなる哨戒艦隊、東四十度、三万メートル!」
 オルガ姫は、すきとおる声で、近づく艦艇を測量した結果を、報告した。
「どこの国のふねだか分らないか」
艦籍不明かんせきふめい!」
 と、オルガ姫は、すぐに応えた。
「艦籍不明か。どうせ汎米連邦の艦隊だろうが、なんの用があって、こっちへ出動したのかな」
 まさか、このクロクロ島が見つかったためではあるまい。
 だが、先刻、久慈は、私に向って警告した。
(この調子では、そっちへも、監察隊が重爆撃機じゅうばくげききに乗って急行するかもしれませんよ!)
 という意味のことを云った。今、近づいてくるのは、哨戒艦であって、重爆撃機ではないから、話はちとちがう。といって、もちろん、安心はならない。
「二万メートル!」
 と、オルガ姫が叫んだ。私は、哨戒艦との距離二万メートルの声を待っていたのだ。
「おお、そうか。では――テレビジョン、け! 吸音器きゅうおんき開け!」
 私は、命令した。
 壁間へきかんに、ぽッと四角な窓があいた。窓ではない、テレビジョンの映写幕である。静かな海面、すこし弯曲わんきょくした水平線、そして、そのうえに、ぽつぽつと浮かぶ三つの黒点――それこそ、近づく三隻の哨戒艦であった。このテレビジョンは、赤外線を受けているので、映写された夜景は、まるで昼間の景色と同様に明るく見えるのだった。
 その横では、吸音器が、はたらきだした。ざざざーッと、いそがしそうに鳴るのは、全速力の哨戒艦が、後へ波浪はろうのざわめきであろう。
 映写幕のうえの艦影かんえいは、刻々に大きくなってくる。
 その三点の黒影は、ぽつぽつぽつと並んでいたと思うと、しばらくすると、どっちからともなく寄って一緒になってしまう。そしてまた暫くすると、離れる。そのとき、一番艦が、左から右へ移り替る。――艦隊は、ジクザク行進をつづけているのだ。
 私は、この様子を、じっと眺めていたが、艦隊が、わがクロクロ島の方位を、完全におさえていることを知った。一体、どこで、うまく見当をつけられてしまったのであろうか。
「こいつは、油断ゆだんがならないぞ!」
 私は、万一の用意をした。
 そのうちに、艦影は、映写幕一杯になった。4と記した赤灯せきとうが、ふっと消えて、その隣りの3と書いた赤灯が点いた。映写幕上の艦影は、とたんに小さくなった。
 が、こんどは、艦影は、どんどん大きくなっていった。赤灯は2が点き、遂に1が点いた。そのころ吸音器から、ぼそぼそと、人の話ごえが聞えてきた。
「一番艦の艦橋かんきょうのこえをれ!」
 私は、号令をかけた。
 オルガ姫は、どこの国の機関部員にも負けない敏捷びんしょうさでもって、しきりに目盛めもりを合わせた。――吸音器からのこえが、急に大きく、明瞭めいりょうになってきた。
「司令、たしかにこの方位にちがいないのですがなあ」
 と、アメリカなまりのある英語が!

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]  ... 下一页  >>  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告