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大空魔艦(たいくうまかん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:23:12  点击:  切换到繁體中文



   難破船なんぱせん


 丁坊は、チンセイの帰ってくる足音を、いまかいまかと待ちつづけた。チンセイはうまく話をしてくれたかしら?「笑い熊」機長は、丁坊を自由にしてくれるかしら。
 どやどやと、入りみだれた足音が近づいてきた。チンセイ一人ではなさそうだ。ではうまく行ったのかと思っていると、扉がガチャリと明いた。
 真先に入ってきたのは、例の防毒面の怪人で、一番えらそうな人物――これこそ機長の「笑い熊」であると知られた。
 そのうしろからチンセイや、主脳部しゅのうぶの怪人たちがつづいた。
 チンセイは「笑い熊」のうしろからとびだしてきて、丁坊のそばにすりよった。
「おい丁坊。機長さんに話をしたところ、お前を自由にするまえに、一つ試験をするといっているぜ。その代り、この試験に及第すれば、この空魔艦の一員にとりたててやるというのだ。しっかりやれ」
 丁坊は、うなずいた。試験もよかろう。とにかく早く自由にしてもらわねば、どうすることも出来やしない。
「笑い熊」が手をあげて合図すると怪人たちは太い針金でもって、丁坊の身体をぐるぐるといてしまった。
 どうするのかと思っていると、「笑い熊」がチンセイをよんで、なにごとかを命令した。
 それを聞いていたチンセイは、窓のそとをのぞいて、さっと顔色をかえた。そして丁坊のそばによって、気の毒そうな声でいった。
「丁坊、いまから試験が始まるそうだ。これからお前は、地上におろされるのだ。そしてそれから先、どんな目に遭おうとも、黙って我慢していて、後にわれわれが迎えに行くまで待っているのだ、いいか」
 地上におろされる?
 どういう風におろされるのだ。彼の身体は、いま針金でぐるぐるきにされている。なんだか一向わからない。
「笑い熊」が、またさっと手をあげた。
 すると怪人たちは、いきなり毛皮の袋に入った丁坊をだきあげて、窓の外に出した。
ッ、――」
 目がくらくらした。はるかに何百メートル下の氷原が、きらきら光っている。
 丁坊の身体は、そろそろと下る。
 針金がだんだんのばされるのだ。針金一本が丁坊の生命の綱だ。
 おそろしい宙釣ちゅうづりとなった。ぱたぱたと板のように硬い風が、丁坊のほほをなぐる。そして身体はゴムまりのようにゆれる。いまはさすがの丁坊も生きた心持がない。
 一体どうするのか。このまま下すのだろうか。どこへ下して、なにをさせようというのか。
 このとき丁坊は、すこしずつ近づく下界を見た。いま空魔艦は、だんだん高度を下げながら一つところをぐるぐる廻って飛んでいるようだ。
「おお、あれは何だ」
 そのとき丁坊の眼に入ったものはなんであったか?
「船だ、船だ!」
 それは船であった。氷原の真只中まっただなかに、氷にとざされて傾いている巨船であった。
 ああ北極の難破船なんぱせん! あれが着陸地らしい。
 なぜ丁坊は、そんなところへ、ただ一人で下ろされるのか!
 いよいよ奇怪な空魔艦の行動であった。


   づな


 空魔艦の上から、一本の綱でもって宙につりさげられた丁坊は、気が気ではない。
 丁坊の身体こそは温い毛皮で手も足も出ないように包まれているけれど、顔はむきだしになっていて、氷のような風がびゅうびゅうとほっぺたをうつ。顔一面がこわばってしまって、すっかり感じがなくなり、まるで他人ひとの顔のような気がするのであった。
 下はまっしろにこおりついた氷原ひょうげんである。
ものの形らしいのは、氷上の難破船一つであった。
「あれはどこの国の船だろうかなあ」
 もちろんマストには、どこの国の船だかを語る旗もあがっていず、太い帆げたも、たるんだ帆綱ほづなもまるで綿でつつんだように氷柱つららがついている。
 丁坊をつりさげた綱は風にあおられて、いまにもぷつりと切れそうだ。切れたが最後さいご、いのちがない。なにしろ氷上までは少なくとも七八百メートルはあるだろう。綱が切れれば、身体は弾丸のように落ちていって、かたい氷にぶつかり、紙のようにつぶれてしまうであろう。
 せまってくるこわさに、ともすれば丁坊の気は遠くなりそうだ。目まいがする。頭はずきんずきんと痛む。
「これはとても生命はないらしい。空魔艦の乗組員はひどいやつだ」
 丁坊は、曲らない首をしいて曲げて、上を見た。空魔艦は悠々と上空をとんでいる。
「おや、また綱をくりだしているぞ」
 丁坊が出てきた窓のところから四五人のマスクをした顔がのぞいている。そしてにゅっと出た手が、しきりに綱を下へおろしている。
「いくら綱をおろしたって、とても氷の上にはいかないのに」
 そう思っているうちに、丁坊の身体は急に猛烈なスピードでどっと落下をはじめた。
「あッ、綱が切れたんだ」
 丁坊はおどろきのため息がつまった。目を開こうと思ってもしばらくは目があかなかった。いよいよもうおしまいだ。「笑い熊」機長の大うそつきめ!
 このかん数十秒というものは、丁坊が生れてはじめて味わった恐ろしさであった。
 だが、これでいよいよ自分は死ぬんだなと覚悟がつくと、こんどは急に気が楽になった。そして変なことだが、なんだかたいへん可笑おかしくなった。あっはっはっと笑いだしたいような気持におそわれた。
「――おや、僕は気が変になるんだな」
 気が変になるなんて、なんてなさけないことだろうと、丁坊は歯をくいしばって残念がった。
「どうにでもなれ。これ以上、自分としてはどうすることもないんだ」
 丁坊はすべてをあきらめて、そしてこの上は、せめて日本人らしく笑って死のうと思った。ただしかし、東京にいるお母さんに会えないでぬことがかなしい――。

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