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大宇宙遠征隊(だいうちゅうえんせいたい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:20:48  点击:  切换到繁體中文



   宇宙服


「おーい。三郎君。早くこっちへ来い」
 入口から、三郎を呼ぶ者があった。
 三郎がその方へふりかえると、入口に鳥原青年の顔があった。
「鳥原さん。何の用で?」
「いよいよ月の世界へ下りることになったので、皆、むこうで宇宙服の着方をおそわっているのだ。君も早く来い」
「あ、宇宙服ですか、もう始まったんですね。じや、艇長にちょっとお許しを得ていくことにしましょう」
 三郎は、艇長に申出て、許可をうけ、鳥原青年とともに、艇夫室へ急いだ。
 艇夫室には、艇夫たちが大ぜいあつまっていた。卓子テーブルのうえには、高級艇員が立って皆を見下ろしている。
「もう、大たいあつまったようだな。では、宇宙服の着方をおしえる。まず、実物を見せるがこれが宇宙服だ」
 下から、大きな深海潜水服みたいなものが、さし上げられた。説明役の高級艇員は、それを卓子のうえにかかえ上げた。宇宙服は、架台かだいにかかっていた。自分の横に、その宇宙服をおいて、説明がはじまった。
「これが宇宙服だ。ちょっと見ると、潜水服のようでもあるが、また西洋のよろいのようにも見える。これは全部軽合金で出来ていて、圧力に充分たえるようになっている。手足の間接のところや腰のところが、まるで蜂の腹のようになっているが、これは手足の関節や腰を曲げるのに都合がいいように作ってあるのだ」
 銀びかりのする宇宙服は、見れば見るほど、ものすごいものだった。あんな大きなものを着て歩けるかと心配をするほどだった。
「……この下に、やはり軽合金と特殊ゴムとで出来た長靴をはき、宇宙服にぴっしゃり取付ける。これがその靴だ」
 靴は、みかん箱のように四角ばって、そして大きい。
「また、頭にはこの大きなかぶとをかぶる、ちょっと見ると、潜水兜に似ているが、大きさはもっと大きくて上下に長い円筒形だ。兜の額のところから、こうして二本の鞭のようなものがえていて、釣竿つりざおのように、だらんと下っているが、昆虫の触角しょっかくと似ていて、月の世界で、われわれ同志が話をするのには、なくてはならない仕掛けだ」
 妙な説明が始まった。三郎には、何のことだか、よくのみこめなかった。
「……みんな、この二本の触角をみて、ふしぎそうな顔をしているようだが、これがなかなか大切な物だぞ。つまり、月の世界には空気がないのだ。だから音というものがない。そうだろう。音は、空気の波である。空気がなければ、空気の波も起らない。だから、音がないのだ。すると、月の世界の上で、どんなにわめいても呼んでも、声はつたわらない。だから、話をするのに、音にかわる何物かを使わなければならない。そこでこの触角が役立つのであります」
 なるほど、月の世界には、空気がないから、したがって、音が出ないし、もちろん音がつたわるわけもない。これは困ることであろう。三郎にも、それは分った。
「……で、この触角のはたらきであるが、これは、人間の声に応じて、機械的に震動するようになっている。つまり私がこの兜をかぶり、兜の中でものをいうと――兜の中には空気があるから、声は出ます――すると、その声が、この触角を震動させるのである。つまり、声は空気の震動であるが、触角に伝わって、機械的な震動となって、ぶるぶるぴゅんぴゅんとふるえる。そこで私の触角と、話をしようと思う相手の人の触角とを触れさせておくと、私のいったことばは、例の震動となり、私の触角から相手の触角へ震動が伝わる。その結果、相手の耳のところにつけてある震動板――つまり高声器のようなものさ――が震動して、音を発するのだ。その音というのは、つまり私のことばであります。どうです、わかりますか」


   すばらしい性能


 つまりつまりを連発して、説明者は汗だくだくの説明をこころみた。
 三郎には、くわしいことがのみこめなかったが、よくあり同志が話をするとき、触角をぴくぴくうごかして、たがいに触角をふれあわせているのを見たことを思い出した。蟻は、口がきけない代りに、触角をふれあわせて、ことばを相手に通じるのであろうと思っていたが、それに似たことを、いま人間であるわれわれがやろうというのであるらしい。
「触角は、二本ずつついています。右の触角は、こっちからいう方です。左の触角は、相手のいっていることを聞きわける方です。つまり右は送信用、左は受信用といったものです。わかりましたね」
 三郎は、あの説明者が、蟻と蟻とが触角をつけあって話をしているのを例にとって説明すれば、みんなは一層はっきりわかるだろうと思った。
「そのほか、この宇宙服には、いろいろな仕掛けがついていますが、いずれも自動的にはたらくようになっているから、みなさんは、べつに手をつけなくてよろしい。つまり、その仕掛けというのは、保温装置や、酸素送出器は自動的にはたらいてくれます。照明装置や、小型電機などもついていますが、これも自動的にはたらいてくれるから、心配はいらない。つまり、暗くなれば、兜の上や、腹のところや、靴の先から、強い電灯がつくようになっている。明るくなれば、自然にスイッチが切れて消える。無電も、いつでもはたらく。号令は、みな無電で入ってくる。ずいぶん便利に出来上っている。かんしんしたでしょう」
「うまく出来ているなあ」
 艇夫たちは、口々に、このすばらしい宇宙服のことをほめた。
「ちょっと、おたずねしますが……」
 とつぜん叫んだのは、三郎であった。
「何ですか、君の質問は……」
 三郎は、ちょっとあかい顔になって、
「どうも、心配なことがあるので、おききしますが、この宇宙服を着ている間は、何にもたべられないし、何にものめないのですか」
 と、たずねた。月の世界を歩きまわっているのはいいが、そのうちに、のどがかわき、腹がへって、その場に行きだおれになってはたいへんだと思ったのである。
「ああ、飲食装置のことだね。それは、今説明するのを忘れていた。失敬しっけい失敬」
 と、説明者は、にが笑いをして、
「飲食物は、兜の中に入っています。そして、左の腕に三つのボタンがついているでしょう。その三つの釦には、水、肉、薬と書いてある。水の釦を押すと、水が兜の中へ出ます。ちょうど口の前に管の出口があってそこから出るのです。だから口をあいていれば、うまく口の中へ入る。どうです、うまい仕掛けでしょう」
 と、説明者は、自分が発明者であるかのように、得意になっていった。
「……肉と書いてある釦を押すと、同じ管の出口から肉がとび出します。これはかたい肉ではなく、たものをひき肉にしてあって、おまけに味もつけてあります。それから薬と書いてある釦からは、ねり薬がとびだします。これは野菜を精製したもので、やはりのりのようになっていますから、たべやすい。この水と肉と薬の三つを、すこしずつたべていれば充分活動ができるのです。わかりましたか」
「なぜ、おべんとうをもっていって、手でつかんで口からたべないのですか」
 三郎は、質問をした。
 すると説明者は、ぷっとふきだした。
「じょうだんじゃない。兜をかぶっているから、たべられませんよ。だから、おべんとうを下げていっても、むだです。――みなさん、釦に気をつけてくださいよ」


   着陸命令


 三郎たちは、その場で、宇宙服を配給され、それを着た。
 金属で出来たよろいかぶとは、見たところ、ずいぶん重そうであったが、身体につけてみると、思いのほか、そう重くはなかった。なかなかいい軽合金で作ってあるものと見える。
 さて、宇宙服を皆が着てしまったところは、実に異様な光景であった。なんだか銀色の芋虫いもむしの化け物に足が生え、両足で立って、さわいでいるとしか見えなかった。
「どうです。思いのほか、らくでしょう」
 と、説明者がいった。
「どうもへんですね。だって、この兜をかぶると、音は聞えないはずだが、ちゃんと、おたがいの話が聞えますよ」
 三郎は、それがふしぎでならなかった。
「それはなんでもないことです。いま、この部屋には空気があるから、あたりまえに、声が空気を伝わって聞えるのです。しかし、触角をふれあってごらんなさい。皆さんが口をきけば、触角は空気中でも同じく震動をしますから、触角をふれあっても、話は聞えるはずです。練習かたがた、ちょっと皆さん同志で、やってみてください」
 説明者がそういうので、三郎たちは、なるほどと思って、おかしいのをこらえながら、蟻のまねをして、だれかれの触角にふれてみた。
「なるほど、こいつは妙だ」
「なるほど、ちゃんとあなたの声がきこえますよ。ふしぎだなあ」
「あははは。これは奇妙だ。僕はわざと小さい声で話をしているのですよ」
 あっちでもこっちでも、この触角をつかって話をする練習が、みんなをおどろかせ、そしてよろこばせた。
 こうして艇夫たちは、宇宙服を着こなすことが出来たのだった。
「さあ、それではみなさん。それぞれの職場へ戻ってください」
「はいはい。宇宙服をぬぐのですねえ」
「いや、宇宙服を着たまま、それぞれの職場へもどってください。もうすぐ、月へ上陸することになるから、今から宇宙服に身をかためていてください」
「たばこがのめないから、つらいなあ」
「たばこはのめないですよ。しかしがまんをしてください。月の世界への上陸が失敗したり、それからまた、噴行艇の故障がうまく直らなかった日には、それこそわれわれ一同は、そろって死んでしまうわけだから、それくらいのことは、がまんをしてください」
「わかりました。たばこぐらい、がまんをします」
 異様な姿をした艇夫たちは、ぞろぞろと、それぞれの持ち場へひきあげていった。
 三郎も、艇長のところへもどった。
 司令塔に入ってみると、艇長や、その他の高級艇員たちも、いつの間に着たのか、すっかり宇宙服に身をかためて、持ち場についていた。艇長の宇宙服には「艇長」と書いた札が胸と背中にはりつけてあった。
「いつの間にか、艇長も宇宙服を着られたのですね」
「おお、お前は艇夫の風間三郎だな。どうだ、なかなか着心地がいいだろう」
「そうですねえ。思いのほか、重くはないんだけれど、なんだか動くのが大儀たいぎですね。どうもはたらきにくい」
「それはそうだ。月の上へ降りれば、もっとらくになるよ」
 艇長は、三郎の宇宙服を念入りにしらべてくれた。締め金具の一つがゆるんでいたのを見つけて、艇長はしっかりと締めてくれた。
「艇長。上陸地点の計算が出来ました」
 航空士が、図板をもって、艇長のところへやってきた。そしていつもの調子で、顔を艇長のそばへ近づけたものだから、航空士の兜と艇長の兜とが、ごつんと衝突した。
「ああ、どうも失礼を……」
「気をつけないといかんねえ」
 と、艇長は、やさしくたしなめて、航空士の手から図板をとりあげた。
「なるほど。すると『笑いの海』へ着陸すればいいんだな。ここへ着陸すると、六日と十二時間は昼がつづくんだな」
 艇長は、妙なことをいった。六日半も昼がつづくなんて、そんなことがあるだろうか。
「さようです。この計算には、まちがいありません」
「よろしい。では、今から『笑いの海』を目標に、着陸の用意をするように」
「はい、かしこまりました。あと三時間ぐらいで、月の表面に下りられる予定です」
「うむ、充分気をつけて……」
「かしこまりました」
 いよいよ噴行艇は、月世界へ向けて、着陸の姿勢をととのえたのであった。

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