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十八時の音楽浴(じゅうはちじのおんがくよく)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 16:59:47  点击:  切换到繁體中文


      3

 十九時過ぎのことだった。
 十九時といえば、古い時刻でいうならば午後七時に当るのだったが、この地底に埋もれている国には、明けることも暮れることもなく、いつも人工光線の下で生活していた。太陽はいつもものうき光線を彼らの国の屋根に相当する地表に投げかけているだけだった。地表には蝶一匹すら飛んでいなかった。たびたびの戦争に、地表面は細菌と毒ガスとに荒れはて生き物はおろか草一本生えていない荒涼たる風景を呈していた。生き残った人間と、わずかの家畜と寄生虫とだけが地底にもぐりこんで種を全うした。
 今も言った十九時過ぎのことだった。アリシア区の男学員ペンとアリシロの靴男工ポールとが私室において壺の中の蜜をなめながら話に夢中になっていた。
「ええおい、まったくこれはばかばかしいことじゃないか」
 とポールが大きなジェスチュアをしながらペンをそそのかすように言った。
「うん」ペンはすこし当惑げな顔つきだった。
「うんじゃないよ、ペン公。俺たちの自由が束縛され個性が無視されているんだ。本来俺たち人間は、煙草もすいたいんだ。酒ものみたいんだ。それをあの閣下野郎がすわせない飲ませないんだ、これじゃ何処に生き甲斐があるというんだ」
「オイ頼むから、あまり大きな声を出さんでくれ。誰かに聞えるとよくないぜ」
「なアに、誰かに聞えれば、そいつも至極もっともだと思うにちがいない。もっともだと思わないやつは、あの39番音楽にまだたぶらかされている可哀想なやつだよ」
「そういえば、ポール。お前にはミルキ閣下ご自慢の音楽浴もあまり効いていないらしいネ」
「うむ。もちろんそのとおりだよ」とポールは昂然と肩を張っていった。「これは大秘密だが、ちょっと俺の臀に触ってみろ」
 ペンは言われるままに、好奇の眼を輝かして、ポールの臀をズボンの上から触ってみた。するとそこには、なんだか竹籠のようにガサガサしたものが手にふれた。
「やッ、これは何だ。何を入れているんだ」
「ふふふ、どうだ分ったか。これはナ、俺が一年間かかって繊維をかためて作った振動減衰器なんだ。知っているとおり、あの音楽浴てえやつは耳から入るのはごく少くて、殆ど全部が廊下から螺旋椅子を伝わって身体の中に入りこむのだ。だからよ、この振動減衰器を臀に敷いてさえいれば、螺旋椅子から伝わってくる39番音楽の振動を相当に喰い止めることができるんだ。だから俺は、あんな人喰い音楽なんかに酔っぱらいやしないんだ」
「ふーン、なるほど。しかしひどいことをする男だ。それが知れたらどうするんだ」
「知れたらペン公が喋ったと思うぜ。いいかい。さもなければ知れっこないんだ。俺はあの人喰い音楽にかかったようなふうにウーンウーンうなるのがとてもうまいのだ。脂汗だってタラタラ流れてくるよ。お前は知るまいが、座席の前面には隠しマイクロフォンがついているんだ。だからこっちのうなり声は、そのまま総理部の監視所へ伝送されるのだ。靴男工ポールのうなっているのは明らかに自記装置オートグラフに出ている。うなるのを忘れていりゃ警報器アラームが鳴りだすんだ。俺はそんなヘマなことはやらないや」
 ペンはますます呆れ顔だった。見る目嗅ぐ鼻を持ったミルキ閣下に一杯喰わせて得々としている男が、彼の親しい友人の中にいたのである。あまりに強き政治の裏には、あまりに強き反動がある。ポールの罪だけではないとペンは思った。そしてポールと話しておれば、音楽浴の麻酔がジワジワと融けてくるのをさえ感じた。彼もまたポールと同じく、ミルキ閣下を冒涜する一人であると思った。
「ねえポール。そういえばバラに注意したがいいよ。あの女はお前のことを廃物電池といってさげすんでいたぜ。バラにこの秘密を嗅ぎつかれると大変だ」
「バラはお前の細君じゃないか。お前がしっかりしていりゃ、知れるきづかいはない」
「うんにゃ、バラは男のように鋭い女だ。俺の手にはおえない」
「なんだペン公、亭主のくせに、情ない弱音を吹くな」
「いや亭主はもう廃業しようかと思っている。あんな女に連れ添っていると、世の中がいっそう味気なくならあ」
「へえ、そいつは本気か。別れてしまって、また女房を探すんだろうが、誰かに見当をつけているのかい」
「冗談じゃない。気の合う優しい女なんていないものだな。なあポール。俺はお前が男友達でなくて女友達だったらいいと思うよ」
「ナニ女友達」ポールが口を丸くあけてパチパチ目をまたたいた。「ペン公、本当にそう思うかい」
「本当に思うって聞くのかい。もちろんさ。なぜそんなことを聞くんだい」
 ポールは無言でペン公の手を握って引き立てた。そして部屋の隅に立っている衝立の蔭に引張りこんだ。
 スルスルと衣服の摺れ合う音がした。衝立の上に、ポールの上衣がパサリとかかった。それからガチャリと皮革が垂れ下った。
 そのとき、中からペンの愕く声が聞えた。ポールの制する声を押し切ってペンは大声で叫んだ。
「――ああこのことだな。お前が自分で身体を解剖しているって噂のあったのは。なんだこれは大変な手術じゃないか。俺は急にお前が厭になった!」

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