您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 海野 十三 >> 正文

三十年後の世界(さんじゅうねんごのせかい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 16:23:18  点击:1745  切换到繁體中文

底本: 海野十三全集 第13巻 少年探偵長
出版社: 三一書房
初版発行日: 1992(平成4)年2月29日

 

 万年雪まんねんゆきとける


 昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。
 ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。
 すずしいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。東京なんかでは、とても暑くて地上に出ていられなくて、都民はほとんどみな地下街ちかがいに下りて、その一週間をくらしたほどだった。
 ものすごい暑さは日本アルプスの深い山の中も別あつかいにはしなかった。アルプス山中の万年雪までがどんどんとけ出した。雪渓せっけいの上を、しぶきをあげて流れ下る滝とも川ともつかないものが出来、積雪はどんどんやせていった。
 うばガ谷の万年雪のことは、むかしから一番面積のひろいものとして、よく人に知られていた。それはまるで氷河のようにこちこちに固まった古い雪であったが、それさえこんどの暑さで両側からとけだし、日に日にやせていった。登山者たちがおどろいたのもむりではない。
「こんなところに流れがあったかね」
「いや、知らないね。地図でみると、どうしてもここはうばガ谷のはずなんだが?」
「でも、へんよ。地図からはかって、ここはどうしてもうばガ谷よ。この地図をごらんなさい。ほら、この岩」
「なるほどなあ、あれはたしかに三角岩だ。これはおどろいた。おい君、有名な万年雪が今年はすっかりとけてしまったんだぜ」
 その人は、とつぜんことばを切って、目を皿のように大きく見ひらいた。
「――何だろう、あれは。……あそこを見たまえ、何だかしらないが、大きなまるい球がある。あの沢の曲ったところだ。見えないかい、君たちには……」
 彼はおどろきをこめて、前へのりだしながら下手しもてを指さした。
「なるほど。見えるよ。大きな球だ。ぴかぴか光っているね。金属球だ」
「ふしぎだ。とにかくそばへ行ってみよう」
「おいおい、待ちたまえ。あれは危険なものじゃないか」
「そういえば、昔の写真に出ている機雷きらいみたいな形をしていますわね」
「ふん、機雷に似たところもあるけれど、機雷は海の中にあるもので、こんな山の中にあるはずがない」
 四人の登山者は、それから谷間をつたわって、下手へおりていった。みんな何となくおそろしいが、しかし自分たちで発見したものだから、ぜひその正体をたしかめたかった。
 ようやくそばへ近よることが出来た。
 沢のまん中に、直径三メートルもあると思われる大きな金属球が、でんと腰をすえていた。表面はぴかぴかに金属光沢を放っている。十字にバンドがしてある。アイ・ボルトが何本かうちこんである。一同はそのまわりをまわってみた。
「や、字が書いてある」
 たしかに字が書いてある。書いてあるというより、字を酸水素焔さんすいそえんかなんかで焼きつけてあるといった方が正しいであろう。

×取扱注意、扉Aを開け×

 それだけのことが書いてある。
 はて、この球は一たい何であろう。


   冷凍人間れいとうにんげん


 四人の登山者の好奇心は、いやがうえにもえあがった。
 もう登山どころでない。このふしぎな金属球の中をのぞいてみないと、承知ができなかった。
「とにかくこの球は、万年雪がとけて、その下から出て来たものだよ。もっと上にあったのが、ころがりだして、ここまで来てとまったんだと思う」
「火星からなげてよこしたものじゃないか。開けると、中から火星人の手紙かなんか入っているんじゃない?」
「火星からじゃないよ。だってこのとおり×取扱注意、扉Aを開け×と、日本文字で書いてあるんだから、これは日本でこしらえたものにちがいない」
「早く、その扉Aというのをあけてみた方がよかないでしょうか」
「そうだ。それがいい。そうしよう」
 扉Aというのはどこかと、球の表面をさがしまわった結果、後の方に半ば土にうずもれて×扉A×と書いてあるものが見つかった。土を掘ってみると、扉Aはまるいふたのようなものであった。それにはハンドルがついていて、左へ二十回ねじるように示してあったので、そのとおりにした。
 するとそのふたみたいなものが開いた。金属板の上には、やはり薄彫うすぼりになった文字がつらなっていた。それを読むと、おどろくべきことが書いてあった。
     *
 この中には小杉正吉こすぎしょうきちという勇敢ゆうかんな少年が冷凍れいとうされている。彼は本年十三歳である。彼は二十年間この中で冷凍生活を続けた後、ふたたび世の中へ出たい希望である。この球を発見せられたる人は、この球が封印ふういんしたるときより二十年以上たっていることをたしかめた後、この少年を冷凍球の中からとりだしていただきたい。それはむずかしいことではない。この底のBとしるした金属板を焼ききると、その中には電気のプラグがある。そのプラグへ五十サイクル交流電気を百ボルトの電圧で供給すれば、四十八時間後には、自動的に球がひらいて、小杉正吉少年が出て来るであろう。それまでの四十八時間は、静かにこの球をおく以外に何も手を加えてはならない。

昭和二十二年八月十三日

 

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]  ... 下一页  >>  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
        没有任何评论
     

    没有任何图片作家

    广告

    ·免费办理日本留学
    ·日本交流社区
    ·贯通留学改版
    ·最火日语聊天室
    ·日本留学信息
    ·了解日本文化
    ·日本娱乐信息
    ·日本留学免费办理
    ·日本最新资讯查询
    ·日语交流论坛
    ·日本时尚信息
    ·贯通广告合作
    ·日语聊天室
    ·日语交流论坛
     
    ·贯通留学免费办理
    ·贯通日本交流社区
    ·贯通留学改版
    ·免费办理日本留学
    ·日本留学免中介费
    ·最火日语聊天室
    ·在贯通推广
    ·日本留学免费办理
    ·在本站做广告
    ·日语交流聊天室
    ·贯通帮您去日本
    ·贯通广告合作
    ·如何免费去日本?
    ·日语交流论坛
     
    广告

    ·贯通日本全新改版
    ·贯通日本交流社区
    ·免费办理日本留学
    ·贯通日本语博客
    ·日本留学免费办理
    ·日本留学免费办理
    ·贯通日本留学改版
    ·日语视频学习
    ·贯通全新改版
    ·日语交流聊天室
    ·留学日本无中介费
    ·贯通广告合作
    ·如何免费留学?
    ·日语交流论坛