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間諜座事件(かんちょうざじけん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 11:23:47  点击:  切换到繁體中文



     4


 部屋を出ようとするときだった。
 ブ、ブ、ブブー。
 卓子テーブルの裏に取付けたブザーが鳴った。
「ほい。XB4が呼んでいるッ」
 弦吾は室内に引返した。壁をポンと開くとめこんだような超短波ちょうたんぱの電話機があった。
「QX30だ」
「こっちは、XB4だ」と電話機の彼方かなたで小さい声がした「報告があったぞ、いよいよ動員指令がくだったそうだな」
「ウン」
「ところで注意を一つ餞別はなむけにする」
「ほほう。ありがとう」
「あの間諜座ね『魚眼ぎょがんレンズ』のついた撮影機で、観客一同の顔つきが何時いつでも自由自在にとれるんだそうだ。ぬかりはあるまいが、顔色を変えたり、変にキョロキョロしちゃいかん。皆の笑うところでは笑い、皆がましているときには澄ましていなくちゃいかん。いいかね」
「魚眼レンズを使っているのか? よおし、油断ゆだんはしないぞ」
「義眼を入れたレビュー・ガールの名前をつきとめるんだって、誰にもたずねちゃ駄目だぞ。敵の密偵みっていは巧妙に化けている。どころに殺されちまうぞ」
「ウン、誰にもきかんで、見付けちまおう」
「見付ける方策ほうさくが立っているのか」
「うんにゃ、そういうわけでもないが、プログラムを探偵すれば、何々子という名前がきっと判るよ」
「それで安心した。じゃ別れるぞ。しっかりやれ、同志QX30!」
「親切有難うよ」
 魚眼レンズで観客全部の顔色をのぞいているッて――ちえッ、そんなものに引懸ひっかけられてたまるものかい!

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