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鞄らしくない鞄(かばんらしくないかばん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 11:16:45  点击:  切换到繁體中文



   天罰てんばつ下る


 事件は、そこまではけた。
 当局は警戒網けいかいもうを三原山のまわりに厳重にかためめぐらした。
 その一方、大学に懇請こんせいして、火口底かこうていに果してラジウム二百グラムが投げこまれてあるのかどうかをしらべて貰った。これは案外苦もなく分った。たしかにラジウムは火口底の南寄りの岩の間にあることが確認された。
 しかし、そのラジウムを取出す方法はちょっと簡単には出来そうもないことが分り、当局は未だに警戒の陣をゆるめないで番をしている。なにしろその後、烏啼の消息しょうそくがさっぱり分らないので、油断ゆだんはならないとのことであった。
 帆村はもうラジウム事件には、大した興味を持っていない。しかし田鍋課長が、彼に自慢らしく語ったところでは、烏啼はあのR大学の研究所のラジウム保管室の向いの研究室の助手にけこんでいて、あのラジウムをたくみにぬすみ出した。それから彼は、かねて連絡をつけてあった看護婦の秋草あきくさに渡した。秋草はそれを持って出て、ぼう飛行場へ急行し、烏啼の一味である矢走という男をして、その品物を飛行機でもって三原山の噴火口に投げおとさせたと認める。例の美男美女というのは、この烏啼と秋草らしいといわれる。研究所の同僚たりし人々は、確かに彼ら二人を、美男美女と認めているから、間違いないと、田鍋課長はいささか得意で、椅子いすの背にふんりかえった。
 帆村の興味は、そんなことよりも、大島の松の木にひっかかっていたお化け鞄と猫又の死骸と血染ちぞめ細紐ほそひもが、何を語っているか、それを解くことにかかっていた。
 その年の春、ひどい海底地震が相模湾さがみわん沖合おきあいに起り、引続いて大海嘯おおつなみが一帯の海岸を襲った。多数の船舶が難破なんぱしたが、その中の一隻に奇竜丸きりゅうまるという二百トンばかりの船があって、これは大島の海岸にうちあげられ、大破たいはした。また乗組員の半数が死傷した。
 この奇竜丸の救援におもむいた官憲は、はからずも、この船の構造や、乗組員の様子に疑惑ぎわくを持ち、厳重に取調べた結果、この船こそ怪賊烏啼天駆うていてんくの持ち船だと分り、そして天罰てんばつとはいえ重傷を負っている烏啼を、遂に他愛たわいなく引捕ひっとらえた。
 このことは早速東京へ無電で連絡され、田鍋課長は再びこの大島へ急行して、烏啼を受取った。
 烏啼はもう観念したものと見え、すべてをべらべらとしゃべった。
 彼の行動は、大体帆村の推理したところに一致していた。しかし烏啼がその後秋草と争って、ついに猫又もお化け鞄も共に自分の手に入れ、それを奇竜丸に持ち込んだばかりか、秋草の自由を束縛してこの船に乗せてしまったことが分った。それから後はずっと海上生活をしていたものだから、この二人の行方は陸上を監視していただけでは知れなかったはずである。
 その烏啼は、海上生活を送りながら、なんとかして大島へ上陸し、三原山の火口底から例のラジウムを取出そうと、機会の来るのをねらっていたが、当局の警戒がすこぶる厳重なため、その目的を達することが出来ないでいた。
 ところが或る日、秋草が実に大胆なる脱走を試みた。
 彼女は、烏啼の部下数名を、たくみなる手段によって籠絡ろうらくすると、その力を借りて、猫又とお化け鞄とを盗み出させ、それから細紐ほそひもで自分の手首をしばって、猫又を入れたお化け鞄に結びつけ、鞄の把柄を下へ押し下げた。すると猫又の浮力ふりょくと、お化け鞄の浮力とによって、鞄は秋草の身体を下にぶら下げたまま宙に浮きあがった。船は依然として走っているものだから、鞄にぶら下った秋草の身体は見る見るうちに船を離れた。
 これに気がついた乗組員が、急いで烏啼に知らせたので、烏啼は顔色をかえて船橋せんきょうへ上った。そして秋草の身体の流れていったと思う方向へ船を戻した。
 だが、折柄おりから空に月はあれど夜のことだから、ついにそれを発見することが出来なかったという。
 この烏啼の告白によって、猫又の死骸とお化け鞄と血染めの細紐の謎がようやく解けそめた。そのようにして秋草は脱走をはかったが、彼女はぐんぐん上空へ引き上げられて息がえたものと思う。そのうちに彼女の身体を吊下つりさげている紐が切れ、下へ落ちてしまったのであろう。おそらくそれは広い海の中であったことと思われる。彼女の繊細せんさいなる手首が紐でこすられて血が出、それが紐の切れ端に残ったことは確かだ。こうして彼女は、遂に敗れて一命いちめいを失ったものらしい。
 臼井は今も行方が知れない。
 それから最後に特筆大書とくひつたいしょしておくべきは、田鍋課長が目賀野を証人として、烏啼に会わせたところ、目賀野がびっくりして烏啼を指して叫んだ。
「やッ、貴様は千田じゃないか」
 烏啼は、繃帯ほうたいを巻いた頭をすこし起こして、ふふんと笑った。
「貴様が千田なら、おい話せ、わしのめいの草枝はどこへれていった」
 千田と草枝が一組となって、いつも目賀野の下で働いていたことは、ずっと前から知られている。
「おれは知らんよ。課長に願って、細紐に残っているあの女の血にたずねてみたがよかろう」
 と、烏啼はいって、むこうを向いてしまった。
 そんなことから、目賀野の姪の草枝こそ、看護婦秋草のことであり、彼女が或るときは烏啼に協力しながら、後には烏啼と張合ってラジウムやお化け鞄やお化け猫の争奪に生命をけたことが判明した。
 これで、鞄らしくない鞄の話は、すべて終ったわけであるが、気の毒なのは赤見沢博士である。博士は研究所を火災かさいで失って、どうにも復興ふっこうの見込みが立たず、あたら英才えいさいいだいて不幸をたんしているという。しかし博士のことだから、そのうちにもっと何かいい手段を考え出すことだろう。博士が、この次に、重力消去装置をどんな方面に活用するかは、非常に興味あることだと思う。





底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
   1992(平成4)年2月29日初版発行
※「深夜の研究室」において、小山嬢が綱を結びつけたところは、「壁際の鉄格子」と「飾椅子」の二つが示してある。矛盾しているが、底本のママとし、本文中には注記しなかった。
入力:tatsuki
校正:原田頌子
2001年7月21日公開
2006年7月27日修正
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