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宇宙尖兵(うちゅうせんぺい)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-24 10:43:38  点击:  切换到繁體中文



   不覚


 その夜の集合場所は、郊外Z九号の飛行場であった。シャルンスト会堂の前から入りこんでいる地下道を下っていくと、今いったZ九号飛行場に出る。もちろんこれは地下飛行場である。
 僕は、ふらふらする足を踏みしめて、清潔に掃除の行届ゆきとどいている地下舗道を下りていった。すぐ改札口に出る。僕は、リーマン博士から渡された切符を見せる。
 でかい腹を持った番人が、切符にはさみを入れて、僕に返しながら、
「はい、よろしい。一等前の十三号という自動車に乗って下さい」
 という。
「十三号車とは、いい番号じゃないね」
「そうです。あまり使いたくない車ですが、今夜は一台足りないのでつい並べてしまったのですよ」
 十三号車は、柩車きゅうしゃのように黒い姿をして、最前列の左端に停っていた。おそろしく古い型の箱型自動車だった。
 運転手が下りてきて、懐中電灯で切符を調べてから、扉をあけてくれた。乗ってみると、たしかにあまり使わない車らしく、ぷうんとかびくさかった。
 車は走りだした。
 遂に「非常な超冒険旅行」のスタートが切られたのであった。
 超冒険旅行とは一体どんな旅行か。それは多分このヨーロッパを出発し、敵軍の間を縫って遂に東洋へ達する旅行なのであろうと思う。潜水艦で渡るのか、それとも飛行機で飛ぶのか、それとも小さな汽船で行くのか。
 いや、そんなことは放って置いてもやがて自然に分ることだ。それよりも今夜は豪華なものだった。行き逢った同業者は必ずとらえて席を一緒にし、高く盃をあげてお互いの幸運を祈り合った。何十人だったか何百人だったか、よく覚えていないが、中でも日本人の同業者に対しては、ひとりひとりに無理やりに紙幣を押しつけてやった。みんな僕の顔を見て、気が変になったのじゃないかといっていたっけ、はははは。
「おう運転手君。車内が真暗まっくらじゃないか。電灯はつかないのかねえ」
 今になって気がついたことだが、わが十三号車は、車内は真暗のまま走っているのだ。運転台には灯がついているが、それも非常に暗い。
「ああ、すみません。旦那のかかっているところにスイッチがありまさあ。それをちょっと右へひねってくださいな」
 と、部屋の隅から声がした。高声器がつけてあるのだ。古い自動車には似合わぬ贅沢な仕掛だ。
「スイッチがあるって、ああ、これか」
 右の肱掛ひじかけの少し上にスイッチがあった。それをひねれというのだ。
 僕はスイッチをぽつんと右へひねった。
 すると急に頭がじいんと痛くなった。そして胸がむかむかしてきた。これはいかんと思って、ポケットから手巾ハンカチを出そうとすると、これはどういうわけか手に力がはいらない。
失敗しまった……)
 と身を起そうとしたが、それも駄目であった。目の前が急に真暗になったと思うと、ぴかぴかと星のようなものが光った。それっきり後のことは憶えていない。
 どこをどう引張り廻されたのか知らない。何時間だか、何十時間だか、それとも何日間だか知らないが、とにかく相当時間が経過したあとで、ぼくは気がついた。
 僕は温い部屋の長椅子の上に長々と寝ていた。
「おや、ここは一体どこだろう」
 僕は長椅子の上に起き上った。頭を振っているとしんがまだすこし痛む。あたりを見廻す。いやに真四角な部屋だ。正六面体の部屋だ。中の調度は、小さな客間といった感じで、出入口のついている壁を除く他の三方の壁には長椅子が押しつけてあり前に細長い卓子テーブルが置いてある。出入口のついている壁には、大きな鏡のついた戸棚がとりつけてある。天井には、グローブ式電灯がめ込んである。ちと無風流な部屋だ。そして一体ここは何処だか、僕の記憶にないところだ。
「目がめたようですね」
 いきなり話しかけられた。
「えっ」
 僕はびっくりして、声のした戸口の方をふりかえった。
 だが、そこには誰も立っていなかった。ドアはしまったままだし、鏡付の戸棚が冷く並んでいるばかりだった。
「そんなにおどろくことはありません。私はリーマンですよ」
 姿なき者はそういった。なるほどリーマン博士の声音こわねにちがいなかった。僕はぎくりとしたが、同時に腹が立った。
「リーマン博士。この仕打は、あまり感心できませんね。僕に一言のことわりもなく、知覚を奪ってこんな牢獄へ引張り込むなんて……」
 僕はわざと牢獄という言葉を使った。例の箱型自動車十三号の中で僕は電灯のスイッチをひねると共に昏倒こんとうしたことを、このときになって思い出したのだった。
「岸君。どうぞ何事も善意に解釈してください。お約束どおり、午前二時、Z九号飛行場を自動車が動き出したときに、貴方は今回の超冒険旅行のについたわけです。それからこっちは、艇長たる私が、貴方の身体も生命も共に預ったのです。極秘の旅行ですから、ちょっとねむって貰ったのです。もう大丈夫ですから安心してください。貴方は無事本艇の中に収容を終りました。しばらくそこで休息していてください。そのうちに、貴方の気が落付くように、誰かをそこへ迎えに行って貰います」
 博士はよどみなくべたてた。
 箱型自動車の中で、僕は自らスイッチをひねって、麻睡瓦斯ますいガスを放ったことが朧気おぼろげながら確認された。博士のいう極秘の旅行だからやむを得ないことだったろうが、なんだか小馬鹿にされたようで、いい気持ではなかった。そして僕はまんまと「本艇」の中に収容されてしまったのである。
「本艇といいましたね。すると僕の今居るところは、船室なんですか」
 僕はそれをたずねざるを得なかった。
「船室? そうですねえ、船室といってもいいでしょうね」
 博士の声は、この部屋のどこかに取付けてある拡声器かくせいきから流れ出てくるようだ。目の前にある戸棚のどこかに仕掛があるらしい。
「すると目的地はどこですか。もう艇内に落付いた以上、それを明かにしてくれてもいいでしょう」
 僕は、遠慮を捨てて、正面からぶつかっていった。
「まあ待ってください。いずれおいおい分って来ますから、しばらくそのことは……」
「博士。僕は報道員ですぞ。真相は一刻も早く知っていなければなりません」
「それは分っています。しかし私は貴方の健康を案ずるが故に、もう少し待って貰います」
「健康を案ずるとは何故です。僕は病人ではありませんよ。このとおり健康です。博士がいわなければ、こっちからいいましょう。われわれは、ドイツを脱出してはるばる日本へおもむくのでしょう。どうです、当ったでしょう」
 僕は博士の返事を待った。だが博士はそれにこたえなかった。いや、博士がそのことについて返事をこばんだだけではない。その後僕がいくらわめいてみても、博士の声は遂に戸棚からとびだしてこなかった。博士が送話器のスイッチを切ったことは確実だった。
 僕は、囚人に成り下ったような気がした。

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