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狂人日記(きょうじんにっき)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-23 15:49:27  点击:  切换到繁體中文



        四

 朝、静坐せいざしていると、陳老五が飯を運んで来た。野菜が一皿、蒸魚むしうおが一皿。この魚の眼玉は白くて硬く、口をぱくりと開けて、それがちょうど人を食いたいと思っている人達のようだ。箸をつけてみると、つるつるぬらぬらして魚かしらん、人かしらん。そこではらわたぐるみそっくり吐き出した。
「老五、アニキにそう言ってくれ。乃公は気がくさくさして堪らんから庭内を歩こうと思う」
 老五は返事もせずに出て行ったが、すぐに帰って来て門を開けた。
 わたしは身動きもせずに彼等の手配を研究した。彼等は放すはずはない。果してアニキは一人のおやじを引張って来てぶらぶら歩いて来た。彼の眼には気味悪い光が満ち、わたしの看破りを恐れるように、ひたすら頭を下げて地に向い、眼鏡の横べりからチラリとわたしを眺めた。アニキは言った。
「お前、きょうはだいぶいいようだね」
「はい」
「きょうは何先生かせんせいに来ていただいたから、見てもらいな」
「ああそうですか」
 実際わたしはこの親爺が首斬くびきり役であるのを知らずにいるものか。脈を見るのをつけたりにして肉付を量り、その手柄で一分の肉の分配にあずかろうというのだ。乃公はもう恐れはしない。肉こそ食わぬが、胆魂きもたまはお前達よりよっぽど太いぞ。二つの拳固を差出して彼がどんな風に仕事をするか見てやろう。親爺は坐っていながら眼を閉じて、しばらくはさすってみたり、またぽかんと眺めてみたり、そうして鬼の眼玉を剥き出し
「あんまりいろんな事を考えちゃいけません。静かにしているとじきに好くなります」
 フン、あんまりいろんな事を考えちゃいけません、静かにしていると肥りまさあ! 彼等は余計に食べるんだからいいようなものの乃公には何のいいことがある。じきに「好くなります」もないもんだ。この大勢の人達は人を食おうと思ってかげになりひなたになり、小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取早く片附けてしまわない、本当にお笑草わらいぐさだ。乃公は我慢しきれなくなって大声上げて笑い出し、すこぶる愉快になった。自分はよく知っている。この笑声の中には義勇と正気がある。親爺とアニキは顔色を失った。乃公の勇気と正気のために鎮圧されたんだ。
 だがこの勇気があるために彼等はますます乃公を食いたく思う。つまり勇気にあやかりたいのだ。親爺は門を跨いで出ると遠くも行かぬうちに「早く食べてしまいましょう」と小声で言った。アニキは合点した。さてはお前が元なんだ。この一大発見は意外のようだが決して意外ではない。仲間を集めて乃公を食おうとするのは、とりもなおさず乃公のアニキだ。
 人を食うのは乃公のアニキだ!
 乃公は人食ひとくいの兄弟だ!
 乃公自身は人に食われるのだが、それでもやっぱり人食の兄弟だ!

        五

 この幾日の間は一歩退いて考えてみた。たといあの親爺が首斬役でなく、本当の医者であってもやはり人食人間だ。彼等の祖師李時珍りじちんが作った「本草ほんそう何とか」を見ると人間は煎じて食うべしと明かに書いてある。彼はそれでも人肉を食わぬと言うことが説き得ようか。
 うちのアニキと来ては、全くそう言われても仕方がない。彼は本の講義をした時、あの口からじかに「へてしかしてくらふ」と言ったことがある。また一度、偶然ある好からぬ者に対して議論をしたことがある。その時の話に、彼は殺されるのが当然で、まさにその肉をくらいその皮にぬべしと言った。当時わたしはまだ小さかったが、しばらくの間胸がドキドキしていた。先日狼村ろうそんの小作人が来て、肝を食べた話をすると、彼は格別驚きもせずに絶えず首を揺りうごしていた。そら見たことか、おお根が残酷だ。「へてしかしてくらふ」がよいことなら、どんなものでも皆えられる。どんな人でも皆食い得られる。わたしは彼の講義を迂濶に聞いていたが、今あの時のことを考えてみると、彼の口端には人間の脂がついていて、腹の中には人を食いたいと思う心がハチ切れるばかりだ。

        六

 真黒けのけで、昼かしらん夜かしらん。趙家の犬が哭き出しやがる。
 獅子に似た兇心、兎の怯懦きょうだ狐狸こりの狡猾……

        七

 わたしは彼等の手段を悟った。手取り早く殺してしまうことは、いやでもあるし、またやろうともしないのだ。罪祟りを恐れているから、みなの者が連絡を取って網を張り詰め、わたしに自害を迫っているのだ。四五日このかた往来の男女の様子を見ても、アニキの行動を見ても八九分通りは悟られて来た。一番都合のいいのは、帯を解いてはりに掛け、自分でくびれて死ねば彼等に殺人の罪名がないわけだ。そうすれば自然願いが通って皆大喜びで鼠泣きするだろう。しかし驚き恐れ憂い悲しんで死んでも、いくらか痩せるくらいでまんざら役に立たないことはない。
 彼等は死肉を食べつつある!――何かの本に書いてあったことを想い出したが、「海乙那かいおつな」という一種の代物がある。眼光めつきと様子がとても醜い。いつも死肉を食って、どんな大きな骨でもパリパリと咬み砕き、腹の中にみ下してしまう。想い出しても恐ろしいものだが、この「海乙那」は狼の親類で、狼は犬の本家である。先日趙家の犬めが幾度も乃公を見たが、さてこそ彼も一味徒党で、もう接洽ひきあいもすんでいるのだろう。あの親爺がいくら地面を眺めたって、乃公を胡魔化すことが出来るもんか。中にも気の毒なのは乃公のアニキだ。彼だって人間だ。恐ろしい事とも思わずに何ゆえ仲間を集めて乃公を食うのだろう。やっぱり永年ながねんのしきたりで悪い事とは思っていないのだろう。それとも良心を喪失してしまって、知っていながらことさら犯しているのだろう。
 わたしは食人者を呪う。まず彼から発起して食人の人達を勧誘し、また彼から先手をつける。

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