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吉原新話(よしわらしんわ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-23 10:57:55  点击:  切换到繁體中文



       二

 お三輪がちょうど、そうやって晴がましそうに茶をいでいた処。――甘露梅の今のを聞くと、はッとしたらしく、顔を据えたが、ねたという身で土瓶をトン。
さあちゃん。」
 と背後うしろからお才を呼んで、前垂まえだれの端はきりりとしながら、つまなまめく白い素足で、畳触たたみざわりを、ちと荒く、ふいと座をったものである。
 待遇あいしらいに二つ三つ、続けて話掛けていたお才が、唐突だしぬけに腰を折られて、
「あいよ。」
 で、軽く衣紋えもんおさえ、せた膝で振り返ると、娘はもう、肩のあたりまで、階子段はしごだんに白地の中形を沈めていた。
「ちょっと、」……と手繰って言ったと思うと、結綿ゆいわたがもう階下したへ。
「何だい。」とお才は、いけぞんざい。階子段の欄干てすりから俯向うつむけにのぞいたが、そこから目薬はせなそうで、急いで降りた。
「何だねえ。」
「才ちゃんや。」
 と段の下の六畳の、長火鉢の前に立ったまま、ぱっちりとした目許めもとと、可愛らしい口許で、引着けるようにして、
「何だじゃないわ。お気を着けなさいよ。梅次ねえさんの事なんか言って、兄さんがほかの方にきまりが悪いわ。」
「ううん。」と色気の無いうなずき方。
「そうだっけ。まあ、いやね。」
かない事よ……私は困っちまう。」
「何だねえ、高慢な。」
「高慢じゃないわ。そして、先生と云うものよ。」
「誰をさ。」
「皆さんをさ、先生とか、あの、貴方あなたとか、そうじゃなくって。誰方どなたも身分のある方なのよ。」
「そうかねえ。」
「そうかじゃありませんよ。才ちゃんてば。……それをさ、民さんだの、おはんだのって……私は聞いていてはらはらするわ、お気をけなさいなね。」
「ああ、そうだね、」
 と納得はしたものの、まだなんだか、不心服らしい顔色かおつきで、
「だっていやね、皆さんが、おばけの御連中なんだから。」
 習慣ならわしで調子が高い、ごくないの話のつもりが、処々、どころでない。半ば以上は二階へ届く。
 一同くすくすと笑った。
 民弥は苦笑したのである。
 その時、梅次の名も聞えたので、いつの間にか、縁の幕の仮名の意味が、誰言うとなく自然おのずと通じて、投遣なげやりな投放むすびばなしに、中を結んだ、べに浅葱あさぎの細い色さえ、床の間のかごに投込んだ、白い常夏とこなつの花とともに、ものは言わぬが談話はなしの席へ、ほのかおもかげに立っていた。
 が、電燈でんきを消すと、たちまち鼠色の濃い雲が、ばっと落ちて、ひさしから欄干てすりを掛けて、引包ひッつつんだようになった。
 夜も更けたり、座の趣は変ったのである。
 かねて、こうした時の心を得て、壁際に一台、幾年にも、ついぞ使った事はあるまい、つやの無い、くすぶった燭台しょくだいの用意はしてあったが、わざと消したくらいで、蝋燭ろうそくにも及ぶまい、とかただけも持出さず――所帯構わぬのが、衣紋竹えもんだけの替りにして、夏羽織をふわりと掛けておいた人がある――そのままになっている。
 あかり無しで、どす暗い壁に附着くッついたくだんの形は、蝦蟆がまの口から吹出すもやが、むらむらとそこで蹲踞うずくまったようで、居合わす人数の姿より、羽織の方が人らしい。そして、……どこを漏れて来るともしびの加減やら、しまたもとを透いて、蛍を一包ひとつつみにしたほどの、薄らあおい、ぶよぶよとした取留とりとめの無い影が透く。

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