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朱日記(しゅにっき)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-22 16:15:38  点击:  切换到繁體中文

底本: 泉鏡花集成4
出版社: ちくま文庫、筑摩書房
初版発行日: 1995(平成7)年10月24日
入力に使用: 2004(平成16)年3月20日第2刷
校正に使用: 1995(平成7)年10月24日第1刷

 

      一

小使こづかい、小ウ使。」
 程もあらせず、……廊下を急いで、もっとも授業中の遠慮、しずかに教員控所の板戸の前へ敷居越に髯面ひげづら……というがあごほおなどに貯えたわけではない。不精で剃刀かみそりを当てないから、むじゃむじゃとして黒い。胡麻塩頭ごましおあたまで、眉の迫った渋色の真正面まっしょうめんを出したのは、苦虫と渾名あだな古物こぶつ、但し人のおとこである。
「へい。」
 とただ云ったばかり、素気そっけなく口を引結んで、真直まっすぐに立っている。
「おお、源助か。」
 その職員室真中まんなか大卓子おおテエブル、向側の椅子いすかかった先生は、しま布子ぬのこ小倉こくらはかま、羽織はそでに白墨ずれのあるのを背後うしろの壁に遣放やりぱなしに更紗さらさの裏をよじってぶらり。髪の薄い天窓あたま真俯向まうつむけにして、土瓶やら、茶碗やら、ときかけた風呂敷包、混雑ごったに職員のがちらばったが、その控えた前だけ整然として、硯箱すずりばこ右手めてへ引附け、一冊覚書らしいのをじっながめていたのが、抜上った額の広い、鼻のすっとたかい、髯の無い、おとがいの細い、眉のくっきりした顔を上げた、雑所ざいしょという教頭心得きょうとうこころえ。何か落着かぬ色で、
「こっちへ入れ。」
 と胸を張って袴の膝へちゃんと手を置く。
 意味ありげなていなり。茶碗を洗え、土瓶に湯をせ、では無さそうな処から、小使もその気構きがまえで、卓子テエブルかどへ進んで、太い眉をもじゃもじゃと動かしながら、
「御用で?」
「何は、三右衛門さんえもんは。」と聞いた。
 これは背の抜群に高い、年紀としは源助より大分わかいが、仔細しさいも無かろう、けれども発心をしたように頭髪をすっぺりと剃附そりつけた青道心あおどうしんの、いつも莞爾々々にこにこした滑稽おどけた男で、やっぱり学校に居る、もう一人の小使である。
「同役(といつも云う、さむらいはてか、仲間ちゅうげんの上りらしい。)は番でござりまして、唯今ただいま水瓶みずがめへ水を汲込くみこんでおりまするが。」
「水を汲込んで、水瓶へ……むむ、この風で。」
 と云う。閉込しめこんだ硝子窓がらすまどがびりびりと鳴って、青空へ灰汁あくたたえて、上からゆすって沸立たせるようなすさまじい風が吹く。
 その窓を見向いた片頬かたほに、さっ砂埃すなほこりく影がさして、雑所は眉をひそめた。
「この風が、……何か、風……がはげしいから火の用心か。」
 と唐突だしぬけに妙な事を言出した。が、成程、聞く方もその風なれば、さまで不思議とは思わぬ。
「いえ、かねてお諭しでもござりますし、不断十分に注意はしまするが、差当り、火の用心と申すではござりませぬ。……やがて、」
 と例の渋い顔で、横手の柱にかかったボンボン時計をにらむようにじろり。ト十一時……ちょうど半。――小使の心持では、時間がもうちっとっていそうに思ったので、止まってはおらぬか、とさてみつめたもので。――風に紛れて針の音が全く聞えぬ。
 そう言えば、全校の二階、下階した、どの教場からも、声一つ、しわぶき半分響いて来ぬ、一日中、またこの正午ひるになる一時間ほど、寂寞ひっそりとするのは無い。――それは小児こどもたちが一心不乱、目まじろぎもせずにお弁当の時を待構えて、無駄な足踏みもせぬからで。しずかなほど、組々の、人一人の声も澄渡って手に取るようだし、広い職員室のこの時計のカチカチなどは、居ながら小使部屋でもよく聞えるのが例の処、トみつめても針はソッとも響かぬ。羅馬数字ロオマすうじも風の硝子窓のぶるぶると震うのに釣られて、波をゆすって見える。が、分銅だけは、調子を違えず、とうんとうんと打つ――時計は止まったのではない。
「もう、これ午餉おひるになりまするで、生徒方が湯を呑みに、どやどやと見えますで。湯はたぎらせましたが――いや、どの小児衆こどもしゅも性急で、渇かし切ってござって、突然いきなりがぶりとあがりまするで、気を着けて進ぜませぬと、直きに火傷やけどを。」
「火傷を…うむ。」
 と長い顔を傾ける。

       二

「同役とも申合わせまする事で。」
 と対向さしむかいの、可なり年配のその先生さえわかく見えるくらい、老実なくち
「加減をして、うめて進ぜまする。その貴方様あなたさま、水をフト失念いたしましたから、精々せっせと汲込んでおりまするが、何か、別して三右衛門さんえむにお使でもござりますか、手前ではお間には合い兼ね……」
 と言懸けるのを、遮って、傾けたままかぶりった。
「いや、三右衛門でなくってちょうどいのだ、あれは剽軽ひょうきんだからな。……源助、実は年上のお前を見掛けて、ちと話があるがな。」
 出方が出方で、源助は一倍まじりとする。
 先生も少しきまって、
「もっとこれへ寄らんかい。」
 と椅子をかたり。卓子テエブルの隅を座取って、身体からだはすに、はかまをゆらりと踏開いて腰を落しつける。その前へ、小使はもっそり進む。
「卓子の向う前でも、砂埃すなッぽこりかすれるようで、話がよく分らん、喋舌しゃべるのに骨が折れる。ええん。」としわぶきをする下から、煙草たばこめて、吸口をト頬へ当てて、
ひどい風だな。」
「はい、屋根も憂慮きづかわれまする……この二三年と申しとうござりまするが、どうでござりましょうぞ。五月も半ば、と申すに、北風ならいのこうはげしい事は、十年以来このかたにも、ついぞ覚えませぬ。いくら雪国でも、貴下様あなたさま、もうこれ布子から単衣ひとえものと飛びまする処を、今日こんにちあたりはどういたして、また襯衣しゃつ股引ももひきなどを貴下様、下女の宿下り見まするように、古葛籠ふるつづら引覆ひっくりかえしますような事でござりまして、ちょっと戸外おもてへ出て御覧ごろうじませ。鼻も耳も吹切られそうで、何ともしのぎ切れませんではござりますまいか。
 三右衛門なども、鼻のさき真赤まっかに致して、えらい猿田彦さるだひこにござります。はは。」
 と変哲もない愛想笑あいそうわらい。が、そう云う源助の鼻も赤し、これはいかな事、雑所先生の小鼻のあたりもべににじむ。
「実際、きびしいな。」
 と卓子テエブルの上へ、煙管きせるを持ったまま長く露出むきだした火鉢へかざした、鼠色の襯衣しゃつの腕を、先生ぶるぶると震わすと、歯をくいしばって、引立ひったてるようにぐいともたげて、床板へ火鉢をどさり。で、足を踏張ふんばり、両腕をずいとしごいて、
「御免をこうむれ、行儀も作法も云っちゃおられん、遠慮は不沙汰ぶさただ。源助、当れ。」
「はい、同役とも相談をいたしまして、昨日きのうにもふさごうと思いました、部屋(とたまりの事を云う)のにまたかじりつきますような次第にござります。」と中腰になって、鉄火箸かなひばしで炭をあらけて、五徳をって引傾ひっかたがった銅の大薬鑵おおやかんの肌を、毛深い手の甲でむずとでる。
「一杯たぎったのをしましょうで、――やがてお弁当でござりましょう。貴下様組は、この時間御休憩で?」
「源助、その事だ。」
「はい。」
 と獅噛面しかみづらを後へ引込ひっこめて目を据える。
 雑所は前のめりに俯向うつむいて、一服吸った後を、口でふっふっと吹落して、雁首がんくびを取って返して、吸殻を丁寧に灰に突込つっこみ、
「閉込んでおいても風がゆすって、吸殻一つも吹飛ばしそうでならん。危いよ、こんな日は。」
 とまた一つ灰をあびせた。ひとみを返して、壁の黒い、廊下をながめ、
塩梅あんばいに、そっちからは吹通さんな。」
「でも、貴方様まるで野原でござります。お児達こだち歩行あるいた跡は、平一面たいらいちめんの足跡でござりまするが。」
「むむ、まるで野原……」
 と陰気な顔をして、伸上って透かしながら、
「源助、時に、何、今小児こどもを一人、少し都合があって、お前達の何だ、小使溜こづかいだまりったっけが、何は、……部屋に居るか。」
りまするで、しょんぼりとしましてな。はい、……あの、嬢ちゃん坊ちゃんの事でござりましょう、部屋に居りますでございますよ。」

       三

「嬢ちゃん坊ちゃん。」
 と先生はちょっと口のうちで繰返したが、直ぐにその意味こころを知ってうなずいた。今年九歳ここのつになる、校内第一の綺麗きれいな少年、宮浜浪吉といって、名まで優しい。色の白い、髪の美しいので、源助はじめ、嬢ちゃん坊ちゃん、と呼ぶのであろう?……
「しょんぼりしている。小使溜こづかいだまりに。」
「時ならぬ時分に、部屋へぼんやりと入って来て、お腹が痛むのかと言うて聞いたでござりますが、雑所先生が小使溜へ行っているように仰有おっしゃったとばかりで、しおれ返っておりまする。はてな、ほかのものなら珍らしゅうござりませぬ。このに限って、悪戯いたずらをして、課業中、席から追出されるような事はあるまいが、どうしたものじゃ。……寒いで、まあ、当りなさいと、炉の縁へ坐らせまして、手前も胡坐あぐらいて、火をほじりほじり、仔細しさいを聞きましても、何も言わずに、恍惚うっとりしたように鬱込ふさぎこみまして、あの可愛げに掻合かきあわせた美しい襟に、白う、そのふっくらとしたあご附着くッつけて、しきりとその懐中ふところ覗込のぞきこみますのを、じろじろ見ますと、浅葱あさぎ襦袢じゅばんはだけまするまで、艶々つやつや露も垂れるげな、べにを溶いて玉にしたようなものを、こぼれまするほど、な、貴方様あなたさま。」
「むむそう。」
 と考えるようにして、雑所はまた頷く。
「手前、御存じの少々近視眼ちかめで。それへこう、かすみかかりました工合ぐあいに、薄い綺麗な紙に包んで持っているのを、何か干菓子ででもあろうかと存じました処。」
茱萸ぐみだ。」と云って雑所は居直る。話がここへ運ぶのを待構えたていであった。
「で、ござりまするな。目覚める木の実で、いや、小児こどもが夢中になるのも道理でござります。」と感心した様子に源助は云うのであった。
 青梅もまだ苦い頃、やがて、すももでも色づかぬうちは、実際いちごと聞けば、小蕪こかぶのように干乾ひからびた青い葉を束ねて売る、黄色な実だ、と思っている、こうした雪国では、蒼空あおぞらの下に、白い日で暖く蒸す茱萸の実の、枝も撓々たわわな処など、大人さえ、火の燃ゆるがごとく目に着くのである。
うちから持ってござったか。教場へ出て何の事じゃ、大方そのせいで雑所様に叱られたものであろう。まあ、大人しくしていなさい、とそう云うてやりまして、実は何でござります。……あののおわびを、と間を見ておりました処を、ちょうどお召でござりまして、……はい。何も小児でござります。日頃が日頃で、ついぞ世話を焼かした事の無い、評判の児でござりまするから、今日こんにちの処は、源助、あの児になりかわりまして御訴訟。はい、気が小さいかいたして、口も利けずに、とぼんとして、可哀かわいや、病気にでもなりそうに見えまするがい。」と揉手もみでをする。
「どうだい、吹く事は。ひどいぞ。」
 と窓と一所に、肩をぶるぶるとゆすって、卓子テエブルの上へ煙管きせるてた。
「源助。」
 と再度あらたまって、
小児こども懐中ふところの果物なんか、たもとへ入れさせれば済む事よ。
 どうも変に、気にかかる事があってな、小児どころか、お互に、大人が、とぼんとならなければいが、と思うんだ。
 昨日夢を見た。」
 といで置きの茶碗に残った、つめたい茶をがぶりと飲んで、
「昨日な、……昨夜ゆうべとは言わん。が、昼寝をしていて見たのじゃない。日の暮れようという、そちこち、暗くなった山道だ。」
「山道の夢でござりまするな。」
、実際山を歩行あるいたんだ。それ、日曜さ、昨日は――源助、お前はおのずから得ている。私は本と首引くびッぴきだが、本草ほんぞうが好物でな、知ってる通り。で、昨日ちと山を奥まで入った。つい浮々うかうかと谷々へ釣込まれて。
 こりゃ途中で暗くならなければいが、と山の陰がちと憂慮きづかわれるような日ざしになった。それから急いで引返したのよ。」

       四

「山時分じゃないから人ッ子にわず。また茸狩たけがりにだって、あんなに奥までくものはない。随分みちでもない処を潜ったからな。三ツばかり谷へ下りては攀上よじのぼり、下りては攀上りした時は、ちと心細くなった。昨夜ゆうべは野宿かと思ったぞ。
 でもな、秋とは違って、日のいりが遅いから、まあ、かった。やっと旧道にめぐって出たのよ。
 今日とは違った嘘のような上天気で、風なんか薬にしたくもなかったが、薄着で出たから晩方は寒い。それでも汗の出るまで、脚絆掛きゃはんがけで、すたすた来ると、かすかに城が見えて来た。城の方にな、可厭いやな色の雲が出ていたには出ていたよ――この風になったんだろう。
 その内に、物見の松のこずえさきが目に着いた。もう目の前の峰を越すと、あの見霽みはらしの丘へ出る。……後は一雪崩ひとなだれにずるずると屋敷町の私の内へ、すべり込まれるんだ、とほっと息をした。ところがまた、知ってる通り、あの一町場ひとちょうばが、一方谷、一方覆被おっかぶさった雑木林で、妙に真昼間まっぴるまも薄暗い、可厭いやな処じゃないか。」
名代なだいな魔所でござります。」
「何か知らんが。」
 と両手であごしごくと、げっそりせたような顔色かおつきで、
ひとッきり、洞穴ほらあなくぐるようで、それまで、ちらちら城下が見えた、大川の細いもやも、大橋の小さな灯も、何も見えぬ。
 ざわざわざわざわと音がする。……樹の枝じゃ無い、右のな、そのがけの中腹ぐらいな処を、熊笹くまざさの上へむくむくと赤いものがいて出た。幾疋いくひきとなく、やがて五六十、夕焼がそこいらを胡乱うろつくように……みんな猿だ。
 丘の隅にゃ、荒れたが、それ山王さんのうやしろがある。時々山奥から猿が出て来るという処だから、その数の多いにはぎょっとしたが――別に猿というに驚くこともなし、また猿のつらの赤いのに不思議はないがな、源助。
 どれもこれも、どうだ、その総身の毛が真赤まっかだろう。
 しかも数が、そこへ来た五六十疋という、そればかりじゃない。後へ後へとむらがり続いて、裏山の峰へ尾をいて、はるかに高い処から、赤い滝を落し懸けたのが、岩にくぐってまた流れる、その末の開いた処が、目の下に見える数よ。最も遠くの方は中絶えして、一ツ二ツずつ続いたんだが、限りが知れん、幾百居るか。
 で、何の事はない、虫眼鏡で赤蟻あかありの行列を山へ投懸けてながめるようだ。それが一ツも鳴かず、静まり返って、さっさっさっと動く、熊笹がざわつくばかりだ。
 夢だろう、夢でなくって。夢だと思って、源助、まあ、聞け。……実は夢じゃないんだが、現在見たと云ってもほんとにはしまい。」
 源助はこれを聞くと、いよいよ渋って、あごの毛をすくすくと立てた。
「はあ。」
 と息を内へ引きながら、
「随分、ほんとうにいたします。場所がらでござりまするで。雑所様、なかなか源助は疑いませぬ。」
「疑わん、ほんとに思う。そこでだ、源助、ついでにもう一ツほんとにしてもらいたい事がある。
 そこへな、背後うしろの、暗い路をすっと来て、私に、ト並んだと思う内に、大跨おおまたに前へ抜越ぬけこしたものがある。……
 山遊びの時分には、女も駕籠かごも通る。狭くはないから、肩摺かたずれるほどではないが、まざまざと足が並んで、はっと不意に、こっちが立停たちどまる処を、抜けた。
 下闇したやみながら――こっちももう、わずかの処だけれど、赤い猿がおびただしいので、人恋しい。
 で透かして見ると、判然はっきりとよく分った。
 それも夢かな、源助、暗いのに。――
 裸体はだか赤合羽あかがっぱを着た、大きな坊主だ。」
「へい。」と源助は声を詰めた。
真黒まっくろな円い天窓あたま露出むきだしでな、耳元を離した処へ、その赤合羽の袖を鯱子張しゃちこばらせる形に、おおきひじを、ト鍵形かぎなりに曲げて、柄の短い赤い旗を飜々ひらひらと見せて、しゃんと構えて、ずんずん通る。……
 はた真赤まっかに宙をあおつ。
 まさかとは思う……ことにその言った通り人恋しい折からなり、対手あいて僧形そうぎょうにも何分なにぶんか気が許されて、
(御坊、御坊。)
 と二声ほど背後うしろで呼んだ。」

       五

物凄ものすごさもさきに立つ。さあ、呼んだつもりの自分の声が、口へ出たか出んか分らないが、一も二もない、呼んだと思うと振向いた。
 顔は覚えぬが、あごも額も赤いように思った。
(どちらへ?)
 と直ぐに聞いた。
 ト竹をるような声で、
(城下を焼きに参るのじゃ。)と言う。ぬいと出て脚許あしもとへ、五つ六つの猿が届いた。赤い雲をいたようにな、源助。」
「…………」小使は口も利かず。
「その時、旗をと上げて、
(物見からちと見物なされ。)と云うと、上げたその旗を横に、飜然ひらりと返して、指したと思えば、峰に並んだ向うの丘の、松のこずえさっと飛移ったかと思う、旗のあおつような火が松明たいまつを投附けたようにぱっ[#「火+發」、463-5]と燃え上る。顔も真赤まっかに一面の火になったが、はるかに小さく、ちらちらと、ただやっぱり物見の松の梢の処に、丁子頭ちょうじがしらが揺れるように見て、気がしずまると、坊主も猿も影も無い。赤い旗も、花火が落ちるさまになくなったんだ。

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