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浅草公園(あさくさこうえん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-12 7:14:07  点击:  切换到繁體中文



          57[#「57」は縦中横]

 セセッション風に出来上った病院。少年はこちらから歩み寄り、石の階段を登ってく、しかし戸の中へはいったと思うと、すぐにまた階段をくだって来る。少年の左へ行ったのち、病院は静かにこちらへ近づき、とうとう玄関だけになってしまう。その硝子戸ガラスどを押しあけて外へ出て来る看護婦かんごふが一人。看護婦は玄関にたたずんだまま、何か遠いものを眺めている。

          58[#「58」は縦中横]
 
 膝の上に組んだ看護婦の両手。前になった左の手には婚約の指環が一つはまっている。が、指環はおのずから急に下へ落ちてしまう。

          59[#「59」は縦中横]

 わずかに空を残したコンクリイトの塀。これもおのずから透明とうめいになり、鉄格子てつごうしの中にむらがった何匹かの猿を現して見せる。それからまた塀全体はあやつ人形にんぎょうの舞台に変ってしまう。舞台はとにかく西洋じみた室内。そこに西洋人の人形が一つずあたりをうかがっている。覆面ふくめんをかけているのを見ると、この室へ忍びこんだ盗人ぬすびとらしい。室の隅には金庫が一つ。

          60[#「60」は縦中横]

 金庫をこじあけている西洋人の人形。ただしこの人形の手足についた、細い糸も何本かははっきりと見える。……

          61[#「61」は縦中横]

 斜めに見た前のコンクリイトの塀。塀はもう何も現していない。そこを通りすぎる少年の影。そのあとから今度は背むしの影。

          62[#「62」は縦中横]

 前から斜めに見おろした往来。往来の上には落ち葉が一枚風に吹かれてまわっている。そこへまた舞いさがって来る前よりも小さい落葉が一枚。最後に雑誌の広告らしい紙も一枚ひるがえって来る。紙は生憎あいにく引きかれているらしい。が、はっきりと見えるのは「生活、正月号」と云う初号活字である。

          63[#「63」は縦中横]

 大きい常磐木ときわぎの下にあるベンチ。木々の向うに見えているのは前の池の一部らしい。少年はそこへ歩み寄り、がっかりしたように腰をかける。それから涙をぬぐいはじめる。すると前の背むしが一人やはりベンチへ来て腰をかける。時々風にれるうしろの常磐木。少年はふと背むしを見つめる。が、背むしはふり返りもしない。のみならずふところから焼き芋を出し、がつがつしているように食いはじめる。

          64[#「64」は縦中横]

 焼きいもを食っている背むしの顔。

          65[#「65」は縦中横]

 前の常磐木ときわぎのかげにあるベンチ。背むしはやはり焼き芋を食っている。少年はやっと立ち上り、頭を垂れてどこかへ歩いてく。

          66[#「66」は縦中横]

 斜めに上から見おろしたベンチ。板を透かしたベンチの上には蟇口がまぐちが一つ残っている。すると誰かの手が一つそっとその蟇口をとり上げてしまう。

          67[#「67」は縦中横]

 前の常磐木のかげにあるベンチ。ただし今度は斜めになっている。ベンチの上には背むしが一人蟇口の中をしらべている。そのうちにいつか背むしの左右に背むしが何人も現れはじめ、とうとうしまいにはベンチの上は背むしばかりになってしまう。しかも彼等は同じようにそれぞれ皆熱心に蟇口の中を検べている。互に何か話し合いながら。

          68[#「68」は縦中横]

 写真屋の飾り窓。男女なんにょの写真が何枚もそれぞれ額縁がくぶちにはいってかかっている。が、それ等の男女の顔もいつか老人に変ってしまう。しかしその中にたった一枚、フロック・コオトに勲章をつけた、顋髭あごひげのある老人の半身だけは変らない。ただその顔はいつのにか前の背むしの顔になっている。

          69[#「69」は縦中横]

 横から見た観音堂かんのんどう。少年はその下を歩いてく。観音堂の上には三日月みかづきが一つ。

          70[#「70」は縦中横]

 観音堂の正面の一部。ただしとびらはしまっている。その前に礼拝らいはいしている何人かの人々。少年はそこへ歩みより、こちらへ後ろを見せたまま、ちょっと観音堂を仰いで見る。それから突然こちらを向き、さっさと斜めに歩いて行ってしまう。

          71[#「71」は縦中横]

 斜めに上から見おろした、大きい長方形の手水鉢ちょうずばち柄杓ひしゃくが何本も浮かんだ水にはかげもちらちら映っている。そこへまた映って来る、憔悴しょうすいし切った少年の顔。

          72[#「72」は縦中横]

 大きい石燈籠いしどうろうの下部。少年はそこに腰をおろし、両手に顔を隠して泣きはじめる。

          73[#「73」は縦中横]
 
 前の石燈籠の下部の後ろ。男が一人たたずんだまま、何かに耳を傾けている。

          74[#「74」は縦中横]

 この男の上半身。もっとも顔だけはこちらを向いていない。が、静かに振り返ったのを見ると、マスクをかけた前の男である。のみならずその顔もしばらくののち、少年の父親に変ってしまう。

          75[#「75」は縦中横]

 前の石燈籠の上部。石燈籠は柱を残したまま、おのずからほのおになって燃え上ってしまう。炎の下火したびになったのち、そこに開き始める菊の花が一輪。菊の花は石燈籠の笠よりも大きい。

          76[#「76」は縦中横]

 前の石燈籠の下部。少年は前と変りはない。そこへ帽を目深まぶかにかぶった巡査じゅんさが一人歩みより、少年の肩へ手をかける。少年は驚いて立ち上り、何か巡査と話をする。それから巡査に手を引かれたまま、静かに向うへ歩いてく。

          77[#「77」は縦中横]

 前の石燈籠の下部の後ろ。今度はもう誰もいない。

          78[#「78」は縦中横]

 前の仁王門におうもん大提灯おおじょうちん。大提灯は次第に上へあがり、前のように仲店なかみせを見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消えせない。

(昭和二年三月十四日)




 



底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房
   1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
   1993(平成5)年2月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
   1971(昭和46)年3月~1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1998年4月20日公開
2004年3月7日修正
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