湯治場情緒とリゾートと
草津温泉は、草津白根火山の東側標高1200メートルの高原に、こんこんと自然湧出(ゆうしゅつ)している火山性の強酸性温泉である。西側では標高1800メートルに万座温泉が湧(わ)き出ている。
温泉町のシンボルである「湯畑」には高温の源泉が流れ、立ち込める湯気と温泉に含まれる硫化水素のにおいが、湯量の豊かさを物語っている。
湯畑を中心にそれを取り囲むように発展した町並みには、湯の町情緒がみなぎっている。湯畑に続く「西の河原」「大滝乃湯」など18か所の源泉共同浴場がある。
高原の温泉地で、湿気が少なく夏季でも涼しい自然環境である。
人体には危険が無い濃度ではあるが、温泉水に含まれる硫化水素(温泉らしい卵のような匂(にお)い)の放出により、金属製品が黒くなったり、腐蝕(ふしょく)したりすることがある。
1878年に、ドイツの医学者ベルツが草津温泉を医学的に評価したことから「ベルツ通り」と名付けられた道路の周辺の高原には、ドイツの温泉保養地をモチーフに、独自のクアライフを提案する「中沢ヴィレッジ」がある。
昔ながらの湯治場情緒と、ヨーロッパ風の温泉リゾート。草津はこの2つが上手に区分されている温泉地で、各年代がそれぞれに楽しめる。
立ち込める湯気の中で「湯もみ唄」を合唱しながら、あつい湯をかきまぜ、かぶり湯をして湯長の号令でさっと入り、じっと我慢の3分間で出る「時間湯」。草津独特の入浴法である。
(植田理彦・医学博士) |