最大の魅力は「地獄巡り」
別府温泉郷は大分県の東海岸、瀬戸内海側からの玄関口である別府湾にのぞむ、九州でも有数の大温泉地である。
別府湾を前に展開する別府温泉を代表に、南に浜脇温泉、北の海岸沿いには砂湯のある亀川温泉、その内側には地獄蒸し窯の残る鉄輪(かんなわ)温泉、明礬(みょうばん)の採集地に湧(わ)き出る明礬温泉、打たせ湯や蒸し湯がある柴石(しばせき)温泉、大旅館・ホテルが並ぶ高台の観海寺温泉、まだ秘境的存在の残る堀田温泉が、それぞれ特色を打ち出して、大きく展開している。一般的に「別府八湯」とも呼ばれ、総称して一大「別府温泉郷」を形成している。
江戸時代の「豊国紀行」(貝原益軒、元禄7年・1694)や「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」(正徳2年・1712)などにみると、里屋温泉、鉄輪温泉、宅中温泉、川端温泉、海中温泉などが別府の湯として記録され、また砂湯などもすでに利用されていたことが文中からうかがえる。
別府温泉郷の最大の魅力は「地獄巡り」だ。大正9年(1920年)、皇太子時代の昭和天皇が陸軍の特別大演習が行われた折りに、海地獄、血の池地獄などを見学することになり、急きょ地獄めぐり循環道が設けられた。今日の地獄めぐり道の元(もと)である。
青々とした温泉地で、タマゴをカゴに入れてゆでる風景が名物の海地獄、真っ赤な湯池をたたえる血の池地獄など、温泉の色の不思議さを見せてくれる。
|