日本最初の旅館も健在
北陸の温泉のなかでもひときわ歴史の古さを誇るのが粟津温泉。なかでも1番の老舗旅館が「法師」。創業を養老2年(718年)というから、1285年の歴史を刻む。無論日本で1番古い宿、というより日本で最初の旅館とされるのが「法師」といわれる。当代で46代目。その門前、道路のまん中には3代加賀藩主前田利常公がお手植えの「黄門杉」が巨幹を2つに折りながら樹齢400年の齢を刻んでいる。
現在でも11軒の旅館すべてが自家源泉を持つという、湯量には非常に恵まれた温泉地だ。
しかし、湯町には鉄筋コンクリートのビル旅館が林立。歴史を感じさせるものは「法師」と杉だけという感が強い。
昔は近在の農家の人々が収穫後の骨休めに訪れる温泉であったそうだが、昭和50年代、消防法改定をきっかけに、昔ながらの佇(たたず)まいを持つ宿が次々に建て直され、温泉地全体が観光化していった。しかし、常連客として今でも近在の人々には根強いファンが多く、定期的に3、40人のグループ客が訪れている。
「昔のような馬鹿(ばか)さわぎはなくなりましたが、宴会型の宿泊が今でも継続しています」
と、粟津温泉観光協会事務局長・長谷川好道さん。しかし全体の客層としてはご他聞に漏れず個人化が進み、平成3年に63万人だった入り込みが、14年には半減しているのが実情。「地元の常連客に助けられていることを再認識して、地域の人たちをますます大切にしてゆくことが課題だと考えています」と長谷川さん。差し当たって8月末の「おっしょべ祭り」の集客に今夏の成果をかけているという。
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