男だってつるつる美肌
「ブオー」っというSLの汽笛が山峡にこだまする。ローカル私鉄の大井川鉄道には、郷愁を誘う蒸気機関車が走っている。さらに千頭駅からは、谷のせまった接阻峡を縫ってトロッコ列車が山奥へと分けいってゆく。
大井川本流にそそぐ寸又川の奥には寸又峡温泉が湧(わ)いている。
その昔、傷ついた鹿(しか)が湯浴みしているのを見た猟師がいで湯の存在を知ったという伝説を秘める山の湯だ。源泉は4キロほど山中に入った谷あいに湧いている。アルカリ性単純硫黄泉、43度。これを温泉街の小高い斜面に設けられた町営露天風呂をはじめ、13軒の旅館・民宿に引湯されている。
温泉街から約1キロ奥の夢の吊(つ)り橋の景勝までは手頃(ごろ)な散策コース。せっせっと歩いてきたら汗ばんできた。入り口の「手造りの店さとう」の主人佐藤重治さん(寸又峡美女づくりの湯観光事業協同組合理事)は、「ただ今開湯40周年記念として、露天風呂は3月まで無料開放していますから、ぜひ入って下さい。肌がつるつるになるいい湯ですよ」と勧める。
早速行って入浴。男女別に仮屋根を置いた風呂は、自然の岩をまわりに配し、2本の竹の筒から源泉がそそぎ込まれている。なるほど湯に体を沈めると、全身にまとわりつくような湯は、肌をなでるとつるつる、ぬるぬるといった感じが強い。まさに「美肌の湯だ」と一緒になった男性たちもニコニコ顔だ。男だって美肌を磨きたいのである。ゆっくりたっぷり楽しんだ。