レトロでロマンチック
湯街へ入って行ったら、一時代も2時代もさかのぼった思いにとらわれた。銀山川の清流を挟んだ両側に、3層、4層の木造の湯宿が軒を連ねている。
温泉街は端から端まで歩いても5分とかからないほどせまい。銀山川畔の通りには石畳が整備されていて、旅館と旅館を結んで架けられた橋のたもとには、シックな鋼色(はがねいろ)のガス燈が立ち並び、まるで古い映画の世界に迷い込んでしまったような気分である。看板、のぼりなどすべてがレトロでロマンチックに映る湯の町だ。
そんな湯街の中ほど、銀山川の左岸には、銀山温泉で唯一外来者も利用できる共同浴場の大湯がある。なまこ壁が蔵屋敷風の雰囲気をみせた建物で、向かって右側が男性用、左側が女性用の内湯になっている。含食塩硫化水素泉の湯は、入浴では神経痛、リウマチ、その他生活習慣病関係によく、飲用すると慢性便秘や貧血症などに効果がある。
奥まったところの右手に建つ能登屋旅館は3階の建物の上に望楼を置いて、重厚な感じを見せている。その手前に並ぶ旅館永澤平八、藤屋、向かいの源泉館など、大正時代末期から昭和のはじめにかけて建築された木造高層の宿がずらりと軒を連ねている。
湯街入り口の白銀橋のほとりには、腰をおろして川の流れや景色の楽しめる足湯「和楽足湯(わらしゆ)」があるのでひと休み。源泉がそのまま使われているので、さわやかさもいっぱいであった。
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