外湯めぐりは浴衣姿で
カニのシーズンを迎えている城崎温泉は、電車の中から熱気に満ちている。京阪神の人々にとって、松葉ガニは欠かせぬ冬の味覚で、京都や大阪から「カニカニ列車」が連日出発しているほど。城崎の魚屋もカニ一色で、店員の売り声がすっかり嗄(か)れてしまっていた。
1400年の歴史を刻む城崎温泉。湯町の中心を流れる大谿(おおたに)川には石の太鼓橋がかかり、木造3階建ての旅館が風情を添える「絵に描いたような」温泉町。志賀直哉、島崎藤村、有島武郎をはじめ多くの文人墨客が訪れ、城崎町文芸館にはその足跡が収められている。
城崎の特徴は、湯の町通りを中心に7か所ある外湯の存在。旅館に内湯の整備された現在でも、ほとんどの客が外湯へ出かける。城崎温泉旅館協同組合では「城崎ゆかた憲章」を制定。「ゆかたの似合うまち」づくりに尽力している。
各宿ではチェックインから翌朝10時まで使える無料入浴券を配布、スタンプ帳も用意して宿泊客を町へ送り出す。泊まり客である証明は浴衣を着ているか宿の下駄を履いていること。加えて全(すべ)ての外湯のスタンプを集めれば記念品がもらえるとあって、町中に浴衣姿が溢(あふ)れ、夜遅くまで下駄の音が町に響く。
伝統工芸の麦わら細工をはじめ、商店なども遅くまで店を開けていて「温泉まち」としての賑(にぎ)わいを失っていない。雨の日にはどこへ返してもいいという貸し傘が活躍。旅行客にとっては実に便利で、印象に残るサービスとなっている。
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