ランプの宿の幻想的風景
浅瀬石川の虹の湖公園から青荷川の谷をはるか下に望む、細く険しい山道を延々と奥へ入ったどんづまりの谷間にひそむ一軒宿。まさに「山峡の秘湯」という言葉がぴったりの宿である。
深い緑をかき分けるように下って行った青荷川の渓谷畔に木造二階建ての本館と、隣接する水車館、離れ形式の幻渓楼(山下館)、ふるさと館、十方堂などがある。本館の玄関前の広場には、平成13年にオープンした健六の湯の浴場が建っている。早速入浴。木造りの浴舎、男女別の浴場は、青森ヒバ材の浴槽に、肌ざわりのいい単純温泉の湯があふれていた。
「これができてからは、日帰りでお風呂だけ入りにきてくれる方も楽になりました」と福士収蔵専務。風呂は、本館に内湯が男女別、青荷川を吊(つ)り橋で渡った対岸に、混浴の竜神の湯、青荷の原点といわれる岩風呂の露天風呂があるが、宿泊客や滞在の湯治客などの多い時には、日帰りの入浴客が入り切れないなどの不自由があった。
ここはランプの宿である。廊下も部屋も、ランプが下がって、夜ともなると幻想的な風景を現出する。
青荷川の渓流を前にする露天風呂に入った。まわりをヨシズで囲い、太い竹の湯口から湯滝となって落ちている。浴槽の底には玉砂利が敷き詰められ、足裏に快い刺激をあたえる。すぐ向かいの竜神の湯は、脱衣場は男女別だが浴場は一緒の混浴風呂。昔から子宝の湯として知られていた。昔は太い丸太で作られた陽根が湯船に浮かべてあったが、今は神社に奉納してしまったようで見当たらなくなった。
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