鮮やかな壁画で知られるキトラ古墳(奈良県明日香村)の保存策を検討する文化庁の保存活用等調査研究委員会(座長、藤本強・国学院大教授)が12日、東京都内で開かれ、傷みが激しい一部の壁画は、8月にはぎ取って石室外で修復することを決めた。壁画の現場保存の原則が転換される。会合では、高画質デジタルカメラで撮影した壁画写真が公開された。天井の天文図「星宿」は初めて全容が撮影され、68星座、約350個の星が確認された。また、石室で発見された被葬者と見られる人骨は、鑑定で「熟年から老年」(50~60代)と分かった。
キトラ古墳の東壁に描かれた十二支のトラ。翻った袖や手にした武器の描線がくっきりと写った(文化庁提供)

キトラ古墳の石室天井に描かれた天文図(文化庁提供)
はぎ取って修復するのは、下地のしっくいが壁面から浮き上がるなど状態が悪い東壁(青竜)と西壁(白虎)、北壁の十二支のイノシシとみられる部分。同じ村内の高松塚古墳で、壁画の退色が分かり、文化庁は方向転換を迫られた。修復後にどこで保存するかは未定だが、壁画の公開を求める声も高まりそうだ。
写真は1600万画素のデジタルカメラで撮影された。748枚の写真をつなぎ合わせ、石室の各壁を原寸大に示した写真(フォトマップ)もこの日、公開された。
天文図の写真でこれまで不明確だった石室北側の星座が判別できた。主要な星座がすべてそろっており、円を描くのに使ったコンパスの痕跡も確認できた。へらで描いたとみられる下書きの線刻が壁画の全面に及んでいることも判明し、線刻が認められない高松塚の壁画との技法の違いが鮮明になった。
(07/12 13:33)
|