本多エレクトロンは,2MHz~30MHzの帯域に信号を載せる電力線モデム向けに,コモン・モード雑音(同相の電流が流れたことによって発生する雑音成分)を低減する技術を開発した。
ポイントは2つある。第1に,NECトーキンと共同で,2MHz~30MHz帯電力線モデム向けのトランスとコモン・モード・チョークコイル(CMC)を新たに開発した。第2に本多エレクトロンは,送受信アナログ回路にチューニングを施した。これらにより,電力線モデムをコンセントに接続したときに発生し,電力線に接続された他の機器に影響を与えるコモン・モード雑音を低減したほか,受信感度の向上も達成した。
新たに開発したトランスとCMCを採用したモデムの試作品では,これまでの試作品と比較して,(1)コモン・モード雑音の強度を表すコモン・モード電流が約34dBμA少なくなった,(2)受信感度を表すトランスの出力レベルが約11dBμV/10kHz高くなった,などの改善効果を得たという。コモン・モード雑音が従来の約1/50になった計算だ。
低周波数帯の電力線通信で得た経験を生かす
新たに開発したトランスは,受信感度を向上させることを狙ったものである。従来のトランスでは,電圧を昇圧すると受信可能な帯域が狭くなってしまうので,2MHz~30MHzと広い帯域を用いる電力線モデムでは使えなかったという。本多エレクトロンとNECトーキンは2003年に10kHz~450kHz帯の電力線モデム用トランスを共同開発した経験を基に,電圧を昇圧しても受信可能な帯域が狭くならないようにしたという。CMCについては,新たに電力線通信専用のものを開発した。従来のCMCは,ノーマル・モードのインピーダンスが電力線通信に利用する際には大き過ぎるという問題があったためだ。なお,コモン・モードではインピーダンスの問題はなかったという。
2MHz~30MHz帯を用いる電力線モデムは,10kHz~450kHz帯のものに比べて信号を載せる帯域幅が広く,電力線上の雑音も少ない。本多エレクトロンは電源部雑音の低減,送信部漏洩の低減,受信部雑音のキャンセルなどの技術を既に10kHz~450kHz帯のモデムで確立したとしており,順次これらの技術を2MHz~30MHz帯のモデムに展開する考えだ。電力線から漏洩電界が発生し,それによって発生する電磁雑音が無線通信と混信するという電波干渉の問題についても,今後解決できるように技術開発や実証試験を進めていくとする。同社は最大伝送速度が100Mビット/秒を超える2MHz~30MHz帯電力線モデムの開発を目指しており,2004年夏までに試作機を完成させる計画だ。国内市場を想定しており,規制緩和に合わせて製品化する予定である。 |